おにぎり宮の店主さんに一目惚れした【宮治】 (ページ38)

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『お外真っ暗だ〜んあっは〜』

翌日

兵庫の支社で出来た仲良し組での集まりの帰り

昨日の一件もあったせいでちょっぴり飲み過ぎたけど
お酒弱くないし何とかまだ自我は保てる

火照った体を吹き抜ける夜風が気持ち良い

いつもの帰り道、いつも通りおにぎり宮の前を通り過ぎる。

もうさすがに気付いた。この時間帯にここを通ると
仕事終わりの治くんに遭遇する確率が高い事に

…今日は、会わなそうだ

昨日の今日でモヤってるけどやっぱり会えるかなとか期待してしまうし
一瞬でも顔見たい声聞きたいって思っちゃうの、重症かも

『さみしーなーあいたいなー』

｢誰にー？｣

『おさむくんにー……わっ、治くんだ。ははっ、幻みえた』

｢本物やて｣

ムニッと私の頬を抓る幻の治くん。ほっぺ痛い

『んぐっ、まほろひだからってやってひいこほほ悪ひひょほが
(幻だからってやっていい事と悪いことが)』

治くん(幻)の手を掴むと触れた。あらやだびっくり

『…あれ、触れるじゃん……本物や…』

｢せやからそうや言うとるやん…めっちゃ酔っとんな｣

『全然酔ってないし余裕だし』

｢こんっな遅くまで飲み歩きよって…｣

フラフラする私の二の腕を掴みながら歩幅を合わせ
ゆっくり歩いてくれる

『怒ってる治くんもすきー』

｢おう｣

『けっこんしよなーおさむー』

｢へーへー｣

『治くんはー、元カノとより戻すんですかー』

｢なんやねん急に｣

『戻すんですかー』

治くん効果なのか、少しずつ酔いが覚めてきた

｢戻さへんよ。っちゅうか、｣

『…うん？』

またあの、ちょっぴり不機嫌そうな表情

｢…好きでもなんでもない女に何言われても鬱陶しいだけや｣

『あー……そだね』

聞かなきゃ良かった、かも。

心当たりがありすぎるから。
私の事も含めて言っているのかもしれないから。

頭を鈍器で殴られたような感覚にサーッと酔いが覚めた。

『鬱陶しい、かぁ』

分かってた、分かってたよ。
治くんが私に興味無いことなんて、ちゃんと知ってた。

彼の気持ちも考えずに突っ走ってた。ごめんね。

あの日、手を握ってくれたのも気まぐれなんだ

気がつけば私の自宅前。

｢はよ寝ぇや｣

『ん、ありがと』

これ以上迷惑になるのはごめんだ。

だから、

『…ばいばい。治くん』

以来、私はおにぎり宮へ行くのをやめた。