23個 ページ23
後日
『よし』
仕事が終わり、一旦帰宅して
洗濯して畳んでおいた宮さんのパーカーを
綺麗な袋に入れて抱え、お店へと向かった
『こんばんは〜』
今日は角名くんも、侑も居ないのか…
｢…あ、こんばんは。いらっしゃい｣
『宮さん！こんばんは！！』
カウンター内にポーカーフェイス宮さん発見。会えて嬉しい。
自分の表情がぱあっと明るくなった事が鏡を見なくても分かる
｢どんだけこんばんは言うねん｣
『今日も好………こんばんは！』
｢はいはいこんばんは｣
目尻が下がり口角が少しだけ上がって
ちょっとだけ表情が柔らかくなった宮さんに
胸がギュンってしてパーカーを無意識にぎゅうっと抱きしめていた
このパーカーがもし宮さんだったら私、絞め殺してたかもしれない。危ない危ない
『宮さん、パーカーありがとうございました』
｢おー。ちゃんと返し来たな｣
『はい！いい匂いしま………あ、洗濯したのでご安心を！』
｢最初のは聞かなかった事にしとくわ｣
差し出したパーカーが入った袋を片手でひょいっと受け取る彼。
一瞬触れた指先が熱い。むりしぬ
『そういえば、今日は渡辺くんいないんですか？』
｢今日は休みやで｣
『ほー…』
いつも出迎えてくれる渡辺くんは見当たらないし
なんならさっきまで居たお客さんも既に帰っていて
店内は静まり返っていた
…って事は、ですよ。
『…えへへっ。2人っきり、…ですね？』
｢変な言い方すんのやめぇや｣
『すみません、つい』
｢はぁ｣
『大丈夫ですよ取って食べたりしませんから！…多分！』
｢多分かい｣
『ぐへへ』
｢食うなら飯にしてな｣
いつものでええ？と聞かれ
お願いします！と答えた時、私の声に重なるように
お店の扉が音を立てて開いた。
｢来てやった！｣
『侑だ！おつかれー』
｢おー、A！お疲れさん｣
当然のように私の隣に座った侑は、宮さんに料理を注文して
｢…で、｣とこちらを向いた
｢サム誘ってみたん？｣
『…まだ』
そう。実は私、宮さんをお出掛けに誘いたいのだ。
前に断られただろって？そうだっけ？
会社の同僚が彼氏と行く予定だったけど、
別れて要らなくなっちゃったから…という理由で貰った2枚の映画チケットを鞄から取り出した。
『また断られるって分かってると…なかなかね。あはは…』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 700人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：OX | 作成日時：2021年8月27日 8時
