地獄の業火に燃やされて ページ22
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「探偵社は無益な殺しはしない。
……私はあなたを殺さない。……銃を持てない身体になってもらうだけ」
「何それ。結局殺人と同じじゃん。
腕切断されたら銃を持つどころか日常生活すら送れない。あなたは私からすべてを奪っていく。パパもママも、未来を、幸せを、すべて奪った。次は私の腕を奪うの」
まぁ、もういっか。
「Aさん！！」
大好きな声が響いた。
突然の出来事に35人殺しが怯む。
その一瞬の不意で、私は35人殺しから短刀を奪い自分の喉首に当てた。
「やめてくださいAさん……！お願いですからやめてください！」
安吾さんの泣き出しそうな表情を見て私まで泣きそうになる。ごめんなさい、そんな顔させちゃって。ごめんなさい。
「私は、殺し過ぎました。
罪人は平等に裁かれるべきです」
「殺し過ぎたねぇ……たかが六人じゃあないか」
「だ、太宰さんっ……！」
白髪少年が必死に制止したが、もう遅い。
……そうか、”たかが”か。
「……たかがじゃ、ないんです」
人の命はたかがじゃ、ないのです。
命は皆平等に尊いものなのです。
命はたかがではないのです。
「私は自分の罪を償います。
もし……もしもの話なんて有り得ないですが、もし、戻れるのならパパとママが死ぬ前をやり直したい。パパのお仕事の話が聞きたい。ママの料理を食べたい。それで、それで、安吾さんがたまに家に遊びに来て、みんなで食卓を囲えたら……それはとても素敵なことだろうなって」
涙が溢れた。
し あ わ せ に な り た か っ た。
ただ、それだけだったんだけどな。
「さよなら」
「やめてください……！Aさん、僕は！」
「大好きでした、安吾さん」
あの世で待ってますから。
ゆっくりと目を閉じ、迷うことなく真っ直ぐと、短刀を突き刺した。
「あっ……うっ……どう……して、こんなことに……ってしまったのでしょ……」
当たり前だけれど、銃のように一発では死ねず、ただただ苦しい。首は燃えているように熱く、痛い。けど、人殺しには相応しい死に方だと思う。安吾さんが地面に屈み込むのと、私が倒れ込むのは同時だった。
嗚呼、本当にどうしてこんなことに。
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