【文スト】濃霧と林檎？ 知ってたよ、此の野郎←【文豪ストレイドッグス】【太宰治】

幕は降りず ページ26

「よっ……と」
落ちてきた太宰さんを抱える。
「A」
太宰さんが安心したように私を呼んだ。
「お疲れ様です、兄さん」
さらに上から中也さんが落ちて来た。中也さんは太宰さんの上に折り重なるようにして乗った。
「ぐえ……」
太宰さんが腹の上にやって来た衝撃に苦悶の声をあげる。
中也さんは太宰さんの上に乗ってしまった事に、苛立たしげに眉を寄せた。
「中也兄さんも、お疲れ様です」
「なッ……A、お前……」
私は二人をそっと降ろす。
降ろされた中也さんは汚濁の直後の満身創痍の肉体を動かし、太宰さんの上から這い出ようとする。
「放し、やがれ」
そんな中也さんを太宰さんが止める。
「動くな」
「ああ？」
中也さんが動かないように、太宰さんは中也さんの頭を押さえ付ける。

「A、状況は？」
太宰さんは私を見上げる。
「霧はまだ消えていません。黒龍(芥川君)と白虎(敦君)と雪兎(鏡花ちゃん)が、白麒麟狩りに向かっています」
太宰さんはそれだけ聞くと一つ頷いて中也さんを見た。
「……だそうだ。霧がまだ消えていないこの状態で、君の異能から君を守るなんて状況は御免こうむりたい」
中也さんはそれを聞いて抵抗を止めた。
「……まだ終わってねェのか」
「ああ。……恐らく、ここからだ」
「くそ……」
中也さんが悔しげに呻く。私はうつ伏せの中也さんの身体をひっくり返し、仰向けにさせる。せめて呼吸だけでも楽にさせたい。
「A、君も私から離れない方がいい」
太宰さんは私のスカートの裾を掴んだ。
「何処掴んでいるんですか、張っ倒しますよ」
私は太宰さんを睨み付けながらも、大人しく座り込む。
太宰さんなりに私の異能の分離を心配しているのだろう。ただ、掴む場所は考えて欲しかった。スカートの裾って……一応私、十五歳の乙女。

中也さんは私を一瞥して溜息を吐いた。
「何でAが居るのかだとか訊きてェ事は山ほどあるが……」
中也さんが何とか起き上がろうとする。ただ、満身創痍な上に太宰さんに抑えられている事もあり、殆ど動けない。
「ああクソ、もう指一本……動かせ、ねェ、ぞ」
それが限界の様で、気を失った。
「……中也さん、私が此処に居た事、忘れてくれませんかね」
「無理だろうねえ。こういった事は大抵忘れないよ、この帽子置き場は」
元相棒の太宰さんの説得力がある言葉に肩を落とす。
「回復次第、浴びるように酒飲ませて酔い潰れるのを狙うしか……」
「A、それは中々酷だよ」

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