合流5 ページ16
だが、二人の異能は持ち主に襲い掛かるどころか、互いの異能同士で戦闘を始めた。
龍と虎、四方の対極の位置にいる獣。黒と白、やはり対極の色。
「面白い」
芥川君は口許を歪めた。
「どちらが強いか見届けるか」
「そんなこと云ってる場合か!」
ごもっともである。敵の敵は味方と云う状況は非常に宜しくない。均衡が崩れた途端、何方かに不利益が必ず襲い掛かる。
ましてや二人の異能は強力だ。
そんな異能の興味が、相手の異能の持ち主に逸れたら?
異能を扱えぬ丸腰同然の二人は、この状況では成す術もなく殺されるのがオチだ。
織田作さんくらいの射撃の腕や、中也さんくらいの体術があれば何とかなるだろうが、生憎二人共銃火器の扱いには慣れていないし、素の体術も下手すりゃ太宰さん以下だ。何しろ、今迄の戦闘は異能頼りだったのだから。
既に起き上がっている夜叉白雪は鏡花ちゃんにまた襲い掛かる。
「近くにマフィアの上層部だけが使える秘密通路があるはず」
鏡花ちゃんは夜叉を抑えつつ、私達に提案する。私はそれに便乗して芥川君に視線を送り、
「先に二人で行って。私は鏡花ちゃんと行く」
と告げる。
芥川君は私の口添えがあったからか、直ぐに身体を翻して歩き始める。
「こちらだ。来い、人虎」
敦君は私達の様子を伺う。
「行って!」
鏡花ちゃんと敦君の目が合う。
「必ず行く!」
「……わかった」
敦君は躊躇いつつも、芥川君の後を追った。
それを見届けた鏡花ちゃんは、
「貴女も行って。貴女まで夜叉の相手をする必要は無い」
と攻防を続けながら私に撤退を促す。鏡花ちゃんは何とか渡り合っているといったところだ。一瞬の油断が文字通り命取りの状況だ。
「私の体術はマフィア上位だ。加えて、他者の異能には襲われにくい
私は銃口を夜叉の手元に向ける。
「それに――」
照準が合ったと同時に引き金を引く。
「
「……!」
銃弾は夜叉の刀を弾き飛ばした。
その一瞬の隙に、鏡花ちゃんを攫うかのように担ぎ上げ、そのまま例の中華店に向かって走り出した。
鏡花ちゃんを抱きかかえて中華店に “ダイナミックお邪魔します” をかます。
カウンターテーブルに乗り上げつつ滑るようにして既に開いている隠し扉に向かう。
扉の向こう側に入ったと同時に、隠し扉を閉めた。閉まった数秒後に、衝撃音がした。
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夢秋(プロフ) - 蒼さん» ありがとうございます! 一歩間違えたら夢主ちゃん太宰さんに閉じ込められるくらい無茶してます。早く起きないかなー(どの口が) (6月21日 3時) (レス) id: 9185832e78 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 主人公ちゃんんんん目覚めないと太宰さん泣いちゃうよ!?!?ついでに私も泣くよ!?(?)BEASTめっちゃ好きだけど!!作者様へ神作品です最高ですありがとうございます (6月13日 12時) (レス) @page50 id: 699f0917a9 (このIDを非表示/違反報告)
夢秋(プロフ) - いけるしかばねさん» ありがとうございます! これからしばらくリメイクに入るので実質回想シーン→BEASTで夢主なかなか起きないことになります( ͡ ͜ ͡ ) (2023年2月3日 14時) (レス) id: 28dc9b7eb5 (このIDを非表示/違反報告)
いけるしかばね - ぬあぁぁああ起きろよ主人公!!いやbeastもいいけど嬉しいですけど!!! 続き楽しみに待ってます頑張ってください! (2023年1月31日 16時) (レス) @page50 id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
夢秋(プロフ) - 蒼月さん» ありがとうございます!! イベントとか終わったらぼちぼちリメイクしながら再開します!! (2023年1月24日 2時) (レス) id: 9185832e78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夢野秋 | 作成日時:2021年11月1日 2時