【文スト】濃霧と林檎？ 知ってたよ、此の野郎←【文豪ストレイドッグス】【太宰治】

合流４ ページ15

「早く！」
敦君は弾かれたように鏡花ちゃんを見る。
「！？」
私の援護射撃の中、鏡花ちゃんと夜叉白雪は鍔迫り合いをしていたが、鏡花ちゃんがやや劣勢だ。二人とも激しく動いている為、赤い結晶を狙うのは困難だ。この状況が続けば、人間である鏡花ちゃんが負ける。敦君は孤児院育ちだ。おまけに劣悪な孤児院。それ故、人間の脆弱さをよく知っている。
「うわあああああ！」
敦君は何とか安全装置を外して銃を構える。
途端、黒い物体が夜叉白雪に突撃した。あれは紛れも無く人間だ！
私は駆け寄る。
「Aさん！？」
敦君の声に反応する様に、その人物はゆっくりと立ち上がった。
「お前……芥川」
そして敦君と鏡花ちゃんを視認すると忌々しげに舌打ちをした。
「……貴様らか」
そして私に気付くと、芥川君は明らかに瞠目した。
「……如何して貴女が」
その反応は至極真っ当なものだ。
私は “非異能者の準幹部” で名が通っている。実際四年前迄は異能を自覚する事も無かったし、『ミミック事件』や『三組織異能戦争』で異能を使用した事は、周囲と協力してひた隠しにしてきたからだ。
マフィア内で私が異能者だと正しく理解している人はＱちゃんのみ。『桜桃』隊員達も、若しかしたら察している可能性はあるが、彼等にも公表はしていない。潜入捜査官の立原君(みっちー)とは、互いに何も見なかった事に出来るため彼にバレた分には問題は無い。
「簡単な事。私も異能者だからだよ。……でも、首領(あの人)には黙っててくれない？ もう今の仕事で手一杯だし」
私は芥川君の外套についた土埃を払ってやる。
「それに、君には口止め料くらいの貸しはつくってあるだろう？」
芥川君は少し考えた後、「この件でお返しします」と云ってくれた。世話焼いといて良かった。
「これで貸し借りチャラね」
「……僕の借りはまだ」
「いいよ、君には対組合でよく働いて貰ったから」
そんな会話をしている内に、霧の向こう側から黒い人影のようなものがゆらゆらと近付いてきた。
きらりと人影の腹の辺りが赤く反射する。
「『羅生門』かい？」
芥川君は首肯した。よくアレに耐えたよ、芥川君の肉体は。

そして敦君の背後からは白虎が迫る。白い毛並みの中で主張する額の赤い結晶が光った。
夜叉白雪もゆらりと起き上がる。やはり額の赤が目立つ。

夜叉白雪、羅生門、そして月下獣。
戦闘系異能が周囲を取り囲む。
白と黒の二人は背中を合わせるようにして身構えた。

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