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大切な時に忘れる ページ4

「織田作さん！ 織田作さん！」
私達が爆発現場に行くと、織田作はただ一人倒れていた。
「……息はある、織田作は無事だ。早く医療班を呼び給え」
そんな中でも太宰さんは冷静に指示を出した。流石と云うか、慣れた様子で淡々と指示を出していた。だが、その表情は険しかった。

「『桜桃』特別医療班、只今参上致しました」
私が半ば上の空で捜査をしていると、特医班――特別医療班。『桜桃』隊員の異能力者が班長であり、全員が救急救命士レベルの実力がある――がやってきた。
私は彼等に指示を出した。
「ご苦労、特医班は織田作之助最下級構成員を至急特定医療機関に運べ。命に別状は無いから異能は使わなくていい」
「承知致しました」

こうしている間にもマフィア傘下の店は襲われている。幸い『桜桃』隊員の担当店舗には被害は出ていないが――被害が出る前に相手を消している――他の構成員の担当には分刻みで被害が出ている。その為『桜桃』隊員の幾名かは応援に駆けつけており、今此方の任務に回れる隊員は特医班と掃除班くらいなのだ。

却説、織田作が病院に運ばれたが、結局原作通りに敵の姿の影も形も見つけられなかった。芥川君はかなり悔しがっていたが、それも原作小説通りだった。
とうとう五大幹部会と、準幹部会も招集された。何人か集まらなかったが、二階級特進だそうだ。その中には嫌味を云ってきた例の優秀(・・)な準幹部もいた。見事にフラグを回収してくれたようだが、今となっては興味など湧かなかった。

問題はこれだ。この会議を監督するのが首領だという事だ。空気はピリピリとしていた。
「――却説、五大幹部会でマフィアの全戦力を以てミミックを迎撃することが決定された。つまり、厳戒態勢だ。それで君達準幹部にも対策を練ってもらいたい。何かあるかね？ では、Aちゃんから」
「は。まず我々『桜桃』は引き続き太宰治幹部、織田作之助構成員と協力しつつ捜査を、そして体制が整い次第此方から襲撃致します。つきましては、現在『桜桃』は他部隊の応援に駆けつけておりますが、それを一度取り止め、『桜桃』全体で前述の通りの任務にあたります」
「Aちゃんの所は了解したよ。その通りにしてくれて構わない。早速任務に行っておいで」
首領はにこやかに私を送り出した。
私だけ先に出たから後の内容は知らないが、きっと私が知る必要のない情報なのだろう。

私は早速任務に出かけた。
今日は織田作がジイドと対面する日だ。

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