これでも夢女なんだよ後編 ページ3
「私の友人に、孤児を個人的に扶養している男が居てね」
その声色は冷たいままだったが、どこか哀れみを向けるようでもあった。
「芥川君。貧民街で餓死寸前だった君を拾ったのが織田作だったら……或いは私の妹である『桜桃』の隊長だったら、君を見捨てず、辛抱強く教え導いたろう。それが“正しさ”だ。けど私は、“正しさ”から嫌われた男だ。そう云う男はね、使えない部下をこうするんだ」
言葉の終わりをかき消すように、三発の銃声が閃光と共に響いた。薬莢は床に落ちると場違いな程澄んだ音を立てて転がっていった。
「…………」
キラリと光った汗が芥川君の蒼白い肌を滑り落ちた。
「へえ、やれば出来るじゃあないか」
弾丸は外套を使った異能により、ピタリと静まっていた。
「何度も教えたろう。哀れな捕虜を切り裂くだけが君の力の凡てじゃあない。そうやって防御に使う事も出来る筈だって」
愉快そうに云う太宰さんに、私の身体は今迄の経験から拒否反応を起こしていた。背中が異常な程に粟立ち、すっと体温は抜けていた。
「これ迄……この防御に成功した事はなかった」
掠れた声がやけに痛々しかった。死を目前にした中でのものだった。火事場の馬鹿力、それが先程の、後に空間断絶と云われるものだった。
「でも今こうして成功した。目出度いねえ」
空気がまた強ばった。私は最早吐き気に襲われていた。やはり身体に染み付いた、太宰さんとの記憶に引っ張られているのか、涙目になっていた。
しかし私は必死になって聞き耳を立てた。
次の言葉を聞かなくては、態々肉体の危険を犯してまでここに来た意味が無い。
「次しくじったら、二回殴って五発撃つ。いいな」
声そのものは氷よりも冷たいものだったが、夢女であった私にはご褒美でしかなかった。但し、この身体は耐えきれず、市販のエチケット袋を口に押し当てていたが。
その後の流れも原作小説の通りだった。私が見つからなかったのは奇跡としか云いようがない。
勿論吐瀉物は自治体の規則に従って処分した。
録音した音声は直ぐにデータを移し、自宅のパソコンで編集し、厳重に保管した。恐らくこれを破れるような人は『鼠』のドストエフスキー程の人材だけだろう。
却説――太宰幹部の班と、我等『桜桃』の情報班が見つけた手懸かりは直ぐに私に伝えられた。
それが意味する事に私は真っ青になった。
私は急いで太宰幹部に直接伝えた。手段など選んでいられなかった。
「織田作さんが、危ない」
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ゆめのあき(プロフ) - 舞冬さん» 有難うございます！ 滅茶苦茶悩みながら書いていたところでもあるので嬉しいです！ (2021年8月16日 23時) (
レス) id: 9185832e78 (このIDを非表示/違反報告)
舞冬(プロフ) - 凄いと思いました！神作品をありがとうございます！長文失礼しました。 (2021年8月16日 16時) (レス) id: 42ce09732f (このIDを非表示/違反報告)
舞冬(プロフ) - さんこいち＋夢主のバーでの会話、人物の動き、ジイドとの戦闘を織田作と夢主と相手を変えて太宰さんを武装探偵社に入れて織田作も救済…展開を作るのがとてもお上手で本当に尊敬します！！どこもかしこも読みやすくて心情や関係の変化も分かりやすく描かれていて本当に (2021年8月16日 16時) (レス) id: 42ce09732f (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのあき(プロフ) - 瑠衣さん» ありがとうございます！ ネタはどんどん散りばめたくなります。シリアスブレイク大好き人間なのでw (2021年6月22日 0時) (レス) id: e1a96e1817 (このIDを非表示/違反報告)
瑠衣 - オンデュル語…… 知っている人がいたとは。色々なネタがあってシリアスなところでも読みやすくて好きです！更新楽しみにしてます！！ (2021年6月14日 11時) (レス) id: 26b905e4a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夢野秋 | 作成日時：2019年4月4日 22時
