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異能力2 ページ10

「ぼくの異能はぼくを傷付けることで受信者になる。そしてAちゃんの異能は、この花の香りを吸い込むことで受信者になる。その証拠に……ほら」
Ｑちゃんは服の袖口を捲ってみせた。
そこにはこの花と同じ形にぼんやりと桃色が滲んでいた。
「Aちゃんの異能は、この花の香りを吸い込んだ人に見せたい幻覚を見せるモノなんだ。それも、とてつもないほどにリアルに。この花の成分がちょうど五感を司る神経に届いて、神経をコントロールするんだ」
Ｑちゃんは自分の異能の人形を取り出した。
「ぼくの異能は受信者を詛って狂わせて敵味方無差別に襲わせるものなんだけど、正確には受信者に幻覚を見せてるんだ。その幻覚に出てくる敵が本当は味方とか赤の他人だから、周囲からは、狂った所為で無差別に襲ってるように見えてるんじゃないかなって」
「てことは、私のも同じ？」
私が聞くと、Ｑちゃんはうんと答えた。
「だから、もしAちゃんが相手に見せたい幻覚が『ここから1歩向こうに行けば楽園がある！』ってものだとして、それを崖っぷちで見せたとするとさ、とてつもないことになるよね。一歩向こうに行けば地面がないとかだったら？」
「……」
「その時の受信者はまるで道化師(ピエロ)みたい。幻覚を見てない人(かんきゃく)からしたらさ、『楽園がある！』なんて云ってひとりで勝手に崖から落ちちゃうんだから、阿呆なことをして(おどけて)みせてるようにしか見えない。反対に、受信者が見たくないものだって――」

Aちゃんのは立派な精神操作系なんだよって言葉が聞こえた気がした。
「そしてこの花は神経を操る成分を出し続ける。これが壊れない限り、異能は解除されない。多分太宰さんだとしても……ぼくの人形を消さない限り異能が解除されないのと同じように、花を消さないと異能は解除できない。もしかしたら花を生み出すことは防止できるかもしれないけどね」

Ｑちゃんがそこまで云ったところで、私はまた血を吐いた。さっきから頭痛や目眩や吐き気が止まらない。Ｑちゃんは私の背中を格子扉越しにさすってくれた。
「多分Aちゃんの異能強過ぎるから副作用があるんだ。とりあえず今日はもう帰って休んで！ 精神操作系ならぼくがよく分かってるし、なんかあったらぼくに云って！ あと異能は他の人にはなるべく知らせない方がいいよ！」
Ｑちゃんは私を元気づけるように声の調子を上げた。
私はそのＱちゃんのやさしさに甘え、牢から帰った。

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