検索窓
今日:1 hit、昨日:15 hit、合計:374,034 hit

流れる時に顔を顰め乍 ページ25

「やァ、織田作」
その言葉に、私は息を止めた。
真逆、と私が本を閉じるのと、蒸留酒がカウンター席に置かれるのは同時だった。
「何をしていたんだ?」
赤髪の彼の問に、黒の彼は答える。
「思考だよ。哲学的にして形而上の思考さ」

始まってしまった、と私は目を伏せた。
「それは何だ?」
最下級構成員がそう問うと、幹部は少し考えてから答えた。
「世の中の大抵のことは、失敗するよりも成功するほうが難しい。そうだろう?」
「そうだ」
「じゃあ私は自'殺ではなく、自'殺未遂を志すべきなのだ! 自'殺に成功するのは難しいが、自'殺未遂に失敗するのは比較的容易い筈だ! そうだろう?」
何だその理論。
「確かに」
否、そこは突っ込もうよ。
「矢張りそうだね! 我発見せり(ユリイカ)! 早速試そう。マスター、メニューに洗剤ある?」
「ありません」
「洗剤のソーダ割りは?」
「ありません」
「ないのかあ」
「なら仕方ないな」
否、そこ突っ込もうよ。マジで。

私は亦そう考えていた。そう考えでもしないと――。
これからの事への不安が頭の中をぐるぐると掻き乱した。
関わってしまったら私はもう引き返せないだろう。彼に会ってしまった。其れだけで何かしらの関係は持つ。
ずっと目を背けてきた。会いさえしなければ私が助ける必要は無く、悩む必要も無いと。
でも――。

*
「如何すればいいの?」
彼女は蚊の鳴くような声で呟いた。今にも泣き出しそうな声だった。
彼女が考えていることは、私には全く判らない。幼い時から、ずっと。
彼女がどのような思惑で私と一緒にマフィアに入ったのかも、判らない。

只、幼さを残したその顔は何時もどこか哀しそうな表情をしている。
私と彼女で二人きりの時、私が彼女の心からの笑顔を見た事は一度もない。否、あったのかもしれないが憶えていない。

何時も何か隠している。
まるで彼女は水面に写った春の月のようだ。
あるのは分かっていても掴めず、今にも壊れそうな程朧気だ。

「手前は彼奴の事、何も判っちゃいねェ」
私を見上げて指差してきた彼の声が反響する。あの時の彼は、私が厭がらせをした時よりも険しい顔をしていた。
――悔しいけど、如何やらその通りだ。何も、判らないんだ。

私が思考に耽っていると、隣の友人は蒸留酒を一口飲み、私に問うた。
「それほどに哲学的な思考をしているということは、仕事で失敗をしたのか?」
「そう、そうなのだよ。失敗も、大失敗さ」
私は色々な事を思い出し、口を尖らせた。

思考の歪みとズレ→←進まぬ時の中で



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (354 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
638人がお気に入り
設定タグ:文豪ストレイドッグス , 太宰治 , 転生   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

サングリア - いえのきあさん» 判りました!定期考査頑張って下さい。私も今日から考査です…(´-ω-`) (2018年11月27日 7時) (携帯から) (レス) id: 5b0fbd2365 (このIDを非表示/違反報告)
いえのきあ(プロフ) - サングリアさん» ありがとうございます!今はテストや課題があってなかなか更新できませんが頑張ります!終わりのセラフもテスト終わったらぼちぼち買うので、お待ちくださいませ! (2018年11月26日 22時) (レス) id: 75f23159f6 (このIDを非表示/違反報告)
サングリア - 黒の時代…更新頑張って下さい! (2018年11月26日 16時) (携帯から) (レス) id: 5b0fbd2365 (このIDを非表示/違反報告)
サングリア - 長くてすみません…(´-ω-`)出来たら2つ宜しくお願いします!更新頑張って下さい (2018年11月24日 7時) (携帯から) (レス) id: 5b0fbd2365 (このIDを非表示/違反報告)
サングリア - クルル、クローリーなどの上位吸血鬼に気に入られて心配される。吸血鬼にしようとしている。渚は四鎌童子、アシェラに出会い、話をしたことがある。四鎌童子と一緒に3年間行動した。渚はその事を覚えていない。かなり謎に包まれた渚の過去 (2018年11月24日 7時) (携帯から) (レス) id: 5b0fbd2365 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:夢秋 | 作成日時:2018年2月10日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。