マーガレット/櫻井百瀬 ページ10
レンズの奥の、君の綺麗な目を覗き込むように見て、笑った。
彼女は随分視力が足りないらしくて折角のぱっちりとした可愛らしい瞳が眼鏡によって縮小されてしまっている。熱心にテキストを見つめるとこを邪魔するみたいに君の眼鏡に手をかけて、そぉーっと焦らすみたいに外したらどんな反応するんだろ、って頭の隅で考えた。
「なぁに?わかんないとこでもあった?」
「ここのとこがですね…」
切りそろえられた前髪にしっかり手入れはされているものの化粧は一切施されてなどいない肌。膝が見え隠れするくらいのスカートとオマケに眼鏡。
誰がどの角度から見ても優等生にしか見えないほど定規みたいな真っ直ぐさを持つ彼女は所謂文系女子で理数系はてんでダメだそう。甘え下手そうな彼女が俺にほろりと弱音吐いて「教えて欲しい」って頼んできたのは何より嬉しかったかも。
「櫻井くんってなんていうか要領がいいですよね…羨ましいです」
「まぁね〜、ほら俺色々やってるから要領よくないと君と二人でこうやってお話出来ないでしょ?」
「えっ……………?あっ、ごめん」
瞳が大きく開かれて、彼女のほっぺが桜色のチークを散らしたように色付いた。
そのあと恥ずかしそうに、けれど嬉しそうな顔をする。
「ねぇ、ちょっとだけでいいから眼鏡取らせてよ」
「眼鏡…?あの、私これかけてないと全然見えないですし__」
「君はそのまま座ってるだけだよ?俺が眼鏡外した君の顔を見たいだけ」
ね、いいでしょ?と頼むと彼女はへにゃりと折れた。
「…やっぱ、眼鏡取ったのも可愛い」
眼鏡取ったらめちゃくちゃ可愛いって少女漫画の女の子みたいだね。そう軽く笑うと彼女は俯いて真っ黒な髪で林檎みたいに真っ赤に染ったほっぺたを隠した。
あんまり男心を擽るような反応をされちゃうとちょっと意地悪したくなっちゃう。
視界の邪魔をする黒髪を耳にひっかけてあげると彼女の肩が軽く震える。目の前にいる女のはが目に入れても痛くないほど可愛いんだからこれから出るセリフだってそれしか出なくなりそう。
「ちょっ、と…!人の顔をそんなに見ないでくださいっ…」
「えー、君の素顔なんて滅多に見れる気がしないし近くでよく見せてよ」
椅子から立ち上がりさらにと距離を詰めると自分が彼女の瞳にはっきり映ったのがわかる。君から見たら俺だけがブレなくしっかり見えてるのかな、ぼんやりと浮かぶその発想は酷く自分の心を満たした。
手を伸ばさなくても届くこの距離には安心感と呼ばれりものが確かにあったのだ。
彼女のこの後の一言で、それは更に加算されて。
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蒸田。(むしだ)(プロフ) - くっ…蛍からチョコを貰いたい人生だった… (2019年2月17日 7時) (レス) id: f91a58f64c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花言葉企画参加者一同 x他1人 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年2月14日 22時