Jewelrys Garden【短編合作】 (ページ20)

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アネモネ／吉篠七緒ページ20

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花なんか別に好きじゃなかった。種類によっては香りがきついし、世話をしなければすぐに枯れる。そんな花が俺はそこまで好きではなかった。

そこに突如として舞い込んできた一つの悲報。用務員のおばあさんが倒れてしまい、学園の花壇の世話をする人が一人いなくなってしまったのだという。
倒れたおばあさんは寮の庭の世話をしていた人で、自分の代わりとして俺に寮の花の世話をしてほしいとのことだった。

「や、冴先生、でもオレ」
「大丈夫だって、せっかく本人直々に頼まれたんだからさ。」
「そうじゃなくて、いやそうだけど」

頼んできた張本人である冴先生は怠そうに、かつ何か考えてるような顔で頼んだよと言い何処かへ去ってしまった。俺個人に新しい仕事が入った来たのに、正直全く嬉しくない。特待生に声を掛けられたのはその日の放課後

「そんな目で見て。花が可哀想」
「あー…そうかも、」

俺は自嘲気味に笑う。特待生の物言いが少し刺々しかったのは、俺が花壇に咲く紫の花を無言で静かに見下ろしていたからだろう。特待生は花が好きだって、いつの日かに誰かから聞いたことがある。

「嫌いなの？花」

特待生はなんの遠慮もなく単刀直入に聞いてくる。多分花の前にして面倒な会話は省きたかったのだろう。俺はそれにまぁね、と喉に詰まる曖昧な返答をした。

ふいに吉條くんでもそんな顔もするのね、なんて思ってもないことを言われたりする。生まれつきこういう人間だよ、なんて言う勇気もなく、俺はただ別の場所へ目線を逸すだけ。特待生は俺を冷たい目線で見つめた。
この花は俺に名前すら知られないでただ冷たい視線を送られながら世話をされるのだろうと考えると、このときは少しばかり不憫に思えた。

「アネモネって言うの。この色の他にもたくさん色種がある」

その気持ちを汲み取ったのか、特待生は俺より花の前に出て、一つため息をついたあとにその花の名前を教えてくれた。俺に向ける凍った瞳はそのままで、花を見る目は優しかった。

「和名だと牡丹一華っていうの、日本の花の牡丹に似てるからって理由で」

特待生はまさか牡丹知らないとか言わないでよね、と一瞬疑う目で俺を見たが、俺の表情を察してかそのまま説明を続けた。

我ながらありえないとも思うが、残念なことに薔薇と椿、桜くらいしかちゃんと知らないのである。何がどんな花なのか、てんで見当がつかない。

かろうじて理解できたのは、牡丹という花はアネモネと似ているということだけ

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