Jewelrys Garden【短編合作】 (ページ15)

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月下美人／鳥羽霞ページ15

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感情豊かな彼女の、表情全てが自分だけに向いて欲しいと願い始めたのはいつからだったか。

彼女のその目に映るのは自分だけがいいと、そんな身勝手な願いを隠すようになったのはいつからか。

そんなもの、知りたくも、考えたくもないほど

俺は君に惚れている。

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とあるオーディションの日の前日

最終調整のためにスタジオに寄った俺の目の前に君は現れた。

黒く艶のある髪を後ろでひとつに括り

肌は年頃の女子とは思えないほど綺麗で

決して化粧はしていないだろう彼女は、俺には美しく、それでいて儚い印象をもたせる佇まいだった。

俯いているわけでも表情が険しい訳でもないのに。むしろ堂々と胸を張って彼女はしっかり立っていた。

｢…ホトブラの鳥羽先輩、でしたっけ｣

入口でぼうっと彼女を見ていたらさすがに視線に気づいたらしく、声をかけられた。

口を開きながら、必死に自分の記憶を辿って思い出したであろうその様子さえ、俺には可愛いと思えた。

｢初めまして、かな。
Hot-Broodの鳥羽霞、2年生だよ。
君は、1年の天音Aちゃんだよね？｣

央太が1年生にすごい子がいると、その子が自分の隣の席なんだと言っていた。

その子こそ、今俺の目の前にいる天音Aちゃん。

＿＿特待生になってもおかしくないほどの実力だと言っていた。

｢はい、央太と同室の先輩でしたよね。央太がいつもお世話になってます｣

｢いやそれはこっちのセリフだから！あいつ隣の席の子にも迷惑かけてるのか…｣

心做しか頭が痛くなった。

｢いえいえ、央太がいつも自慢してますよ、鳥羽先輩は優しいって。それはそうと先輩もしかして今からスタジオ使われますか？｣

｢あー明日のために調整しようとしてただけだし、Aちゃんが使っても大丈夫だよ｣

最悪、自分のは部屋でやってもいいのだと心でつぶやく。

｢いえ私ももう辞めようかと思ってたのでちょうど良かったです。どうぞ｣

そう言って手に持っていた台本と置いてあった鞄を持ってドアに向かってきた。

｢先輩とお話出来て良かったです。央太の話通り、鳥羽先輩は優しいんだって分かったので。｣

去り際、その言葉を残して眩しいくらいの笑顔を向けてきた彼女をとても愛おしく思った。