玖拾 ページ48
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義勇さんの背に追いつき、彼の隣で鱗滝さんへと頭を下げる。
引退した身ではあるけれど、鱗滝さんは元水柱。粗相があってはならない相手であることは間違いない。
「中に入りなさい。」
そう一言だけ。
鱗滝さんは家の中に戻ってしまい、義勇さんもそれに続いて家の中へ。私もそれに続いて鱗滝さんの家へと足を踏み入れる。
簡素な作りの家には小ぶりの台所が備え付けられ、座敷には囲炉裏。その奥にはまた引き戸で区切られた部屋があった。
履物を脱いで座敷へと上がる。
鱗滝さんに促され、敷かれていた
「ここまで来るのは大変だっただろうに……御足労いただき感謝仕る、藤宮殿。義勇も、よくぞ帰ってきてくれた。」
鱗滝さんの言葉に歓迎の思いを感じ取り、安堵に胸を撫で下ろす。強ばった体からもようやく力が抜け、視界に色彩が戻り始めた。
『お初にお目にかかります。藤宮 棗と申します、鱗滝左近次様。この度はこのような機会を頂き、恐悦至極に存じます。』
「顔を上げてほしい。藤宮殿が義勇と共に赴いてきてくれたこと。儂の方こそ、感謝せねばならない。」
鱗滝さんが体を畳むように深々と頭を下げるものだから、慌てて義勇さんと共にそれを止める。お互いに頭を下げてばかりで、埒が明かないことに気づいたのか、義勇さんが「先生。」と静かに口を開いた。
「本日こちらへ参りましたのは、結婚の報告のためです。私事で大変恐縮ですが、お時間を頂戴したく……。」
「うむ。」
天狗のお面がこちらを向いた。
鱗滝さんの表情は窺えないけれど、鱗滝さんが紡ぐ言葉は優しく温かいものばかりで。
「藤宮殿のことは、炭治郎が度々手紙に書いていた。」
『……炭治郎君が、ですか？』
「あぁ。藤宮殿と話す時、義勇からは嬉しそうな匂いがすると。そう書いてあった。」
隣に座る義勇さんが目を見開いた。鼻のいい炭治郎君だからこそ、気づけたことなのだろう。義勇さん自身も自覚がなかったらしく、動揺に瞳が揺れていた。
「義勇。」
「……はい。」
「少し、藤宮殿と二人で話がしたい。この家で待っていてくれるか。」
「分かりました。」
「藤宮殿も、よろしいか。」
『だ、大丈夫です。』
義勇さんに見送られながら、私は鱗滝さんと共に外へ出る。そこから脇道に入り、しばらく歩く。
開けた場所にたどり着くと、鱗滝さんが歩みを止めた。
そこには―――
『岩……？』
真っ二つに裂けた岩があった。
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三月の専属ストーカーなつめみく - ｷﾞﾕｳｼｬﾝの不器用な感じがめちゃｽｷｨｯ (2023年10月11日 10時) (
レス) @page23 id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
Kk - 更新再開ありがとうございます。これからも楽しみにしています。 (2023年8月21日 9時) (レス) id: 51f0cf609d (このIDを非表示/違反報告)
香恋 - 夢主ちゃんの心がとても強いのが印象的です。義勇さんと幸せになって欲しいですが、不穏な空気ですね…義勇さん幸せになって欲しいです。。義勇さんの律儀で真面目で美しい雰囲気にピッタリの作品ですね。素敵な作品ありがとうございます。 (2023年6月25日 23時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小鳥遊 | 作成日時：2023年6月20日 0時
