陸拾壱 ページ19
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「―――俺も、お前と共にいたい。」
明確に貰えた義勇さんの返事。安堵しても止まらない涙に、今日は泣いてばかりだな、なんて冷静に考えた。
閉じられてしまった右目からは、涙はもう溢れてはくれないし、見ることさえできない。泣いてばっかじゃ、左目だけの私の視界はぼやけたままなのに、止めることさえままならなかった。
「触れても、いいか？」
『……どうぞ』
義勇さんの指先が私の左目の方へ伸ばされ、そっと涙を拭う。
……もう触れられないという先程の彼の言葉を思い出してしまって。もう一度、彼が私に触れている事実に深く安堵した。
義勇さんは愁色を濃くしながらも口元を緩ませた。それはまるで慈愛と寂寥が混ざりあったような、哀愁を帯びた微笑み。
◇◇◇
涙が落ち着いた頃、私は義勇さんの手を引いて隣に座るように促した。義勇さんは何も言わなかったけれど、先刻までとは違う静寂は心地よく感じる。
何を考えているのか、気にならないわけじゃない。もし私が炭治郎くんのように鼻がよかったのなら、今彼が何を考えているのか分かったのかもしれない。そうでなくても、なんだか今何を思っているのか聞くのは野暮なような気がして、口にはできなかった。
まるでこの世界に二人きりかのように、周囲は闇一色で。月の光さえ夜闇に滲んでいる。それでも、月は俗世から切り離されたかのように綺麗だった。
『今夜は、月が綺麗ですね』
ぽつりと呟いた言葉だった。隣に座る義勇さんを一瞥すると、彼もまた同じように夜空を見上げていた。
「俺は……月が疎ましかった。」
吐息にも似た掠れた声。言葉の続きを待っていると、彼は言い淀むように目を伏せてしまう。
「月が昇れば夜が来る。月は……夜の象徴であり、鬼の象徴だった。」
義勇さんは言葉を選んでいるのか、ゆっくりと言葉を紡いでいく。
鬼殺隊における柱のような存在が、鬼には“十二鬼月”という名で存在していること。夜を連れてくる月が忌まわしく、いつからか夜空を見上げなくなったこと。
寡黙な彼が口にする言葉の端々に、月と鬼を重ねた憎しみが感じられた。
『義勇さ……』
「だが。」
あなたが嫌うものを綺麗だと言ってしまった後ろめたさ。謝罪をしようとした私の口は、彼に遮られたことによって噤むことになった。
「……お前と見る月は、綺麗だと思う。」
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三月の専属ストーカーなつめみく - ｷﾞﾕｳｼｬﾝの不器用な感じがめちゃｽｷｨｯ (2023年10月11日 10時) (
レス) @page23 id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
Kk - 更新再開ありがとうございます。これからも楽しみにしています。 (2023年8月21日 9時) (レス) id: 51f0cf609d (このIDを非表示/違反報告)
香恋 - 夢主ちゃんの心がとても強いのが印象的です。義勇さんと幸せになって欲しいですが、不穏な空気ですね…義勇さん幸せになって欲しいです。。義勇さんの律儀で真面目で美しい雰囲気にピッタリの作品ですね。素敵な作品ありがとうございます。 (2023年6月25日 23時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小鳥遊 | 作成日時：2023年6月20日 0時
