第215話・影山東吾という存在 ページ27
「悪かったな、邪魔をして」
「そんなことないよ、お母さんもきっと喜んでいるから」
お墓参りが終わり帰途に着こうとすると鬼道がAを家まで送る、と言い出した。彼女も最初は断ったが彼は頑として受け付けず、結局Aが折れる形で終わった。
「ねえ、気になるんでしょ、影山のこと」
「それは……」
否定できなかった。彼女はよく鬼道を理解しているつもりでいた。
鬼道のサッカーへの才能と可能性を与えた恩師でもある影山。
卑劣な手を使いサッカーを復讐の道具として使っていた影山。
娘を守ると亡き妻に誓った影山。
そのすべてが影山で言葉にすれば、どこまでも歪んだ人物であることが分かる。
「……以前、お前に聞いたな」
「そうだね」
Aは鬼道含め帝国イレブンに嫉妬、憎悪を抱いていた。それは紛れもなく事実でA自身言葉にしてストンと胸に落ち、自身をさらに理解した気がした。
九重Aという少女はすでにこの世界にはなく、前世である女性の人格が主導権を握る主人格になってはいるが、それでも抱かざる負えなかった感情であった。
おそらくこればかりは元の「九重A」が生まれ持った感情であり、唯一残った意思なのだろう。
「私からすればあの人は可哀想な人なの。それに…」
「?」
「私、影山東吾が…嫌いだ」
明確に嫌悪感を剝きだした。
真・帝国学園の際は、その瞳は涙に潤み弱々しかったが、今は違う。鬼道に嫉妬や憎悪を向けていると言った時とも違う。サツイにも似た嫌悪感を抱いている。
「東吾は…妻も子供も置いて楽をすることを選んだ…。あの人が東吾を嫌いになる理由はそれだけでいい……でも、東吾はあの人の父親で………」
段々と声が小さくなるAは胸を押さえ、顔を上げ鬼道を見つめた。
奥歯を食いしばり怒りなのか、悲しみなのか、寂しいさなのか彼女は肩を震わせていた。
「東吾の血統で…私はある意味支えられている部分もある…」
影山東吾は知っての通り実力で成り上がった天才プレイヤーだ。そんな彼の血統は確かなものでサッカーをほぼやったことのない孫である輝すら、その才能を受け継いでいた。
つまりAのセンスは東吾の血統にも依存している部分があるのだ。
第216話・もっと強くなれるよ→←第214話・鬼道とお墓参り
313人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
活字不足卍(プロフ) - 若いうちにやってみたいことの一つとして、バンジージャンプがある。でも咄嗟に腰が引きそうw (2022年6月9日 1時) (レス) id: 63abfde266 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりりん(プロフ) - 続きが読みたい!!(クソデカボイス) (2021年2月27日 15時) (レス) id: 9679665185 (このIDを非表示/違反報告)
田中優香(プロフ) - 楽しみ過ぎる(豪炎寺の復帰はアツいね) (2021年2月26日 1時) (レス) id: da5dc9d8d2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:活字不足卍 | 作成日時:2021年2月26日 0時