第101話・少女の親 ページ8
ヘリから降ろされ鬼道は救急車に乗せられる佐久間の元へ急いだ。
エイリア石の洗脳も解け正気に戻っているが、佐久間の身体はボロ雑巾のように酷い有様だった。
「悪いな、鬼道…久しぶりだって言うのに、握手も出来ない…」
「構わない…」
佐久間が握手を出来ない代わりなのか、鬼道が彼の手を強く熱が伝わるように握る。それを見た秋の表情が悲痛に歪んだ。
「おかげで目が覚めたよ…。でも、嬉しかった……一瞬でも、お前の見ている世界が見えたからな」
鬼道は、試合中佐久間が言っていた言葉を思い出す。あれがすべて、佐久間の本心でいつも隠していたこと、それを気付くことが出来なかった自分を悔いた。
「身体、治ったら…またサッカー一緒に…」
佐久間は譫言のように覇気のない声で「やろうぜ…」と言った。
「…ああ、待ってる」
佐久間と源田は救急車で搬送されて行った。
━━━━━━その夜、みんなが寝静まった頃…Aは鬼道に呼び出されていた。
鬼道は、自分が先に起きたと思っていたが、先にいた髪を解いたAが月に照らされ幻想的に見えた。
「鬼道」
「! わ、悪い。待たせたな」
「私も今来たばかりだから」
「そうか」
お互いに今の会話がまるでデートの待ち合わせをした、初々しいカップルかと思う会話だった。
「貴方の言いたいことは分かる。…あの人のことでしょ?」
「…ああ。面識が…いや、まさか…影山がお前の…━━━━━━父親だったなんて」
「幻滅した? それとも、裏切り者とでも円堂たちに言う?」
「そんなわけが…」
鬼道から視線を逸らしたA。
「羨ましかった…」
「?」
「…羨ましかった…鬼道。君が。うんん……
私は、帝国イレブンに対して嫉妬…いや、憎悪すら覚えていた」
「ぞう、おだと…?」
鬼道には理解できなかった。
「だって、貴方たちあの人からサッカーを教えてもらっていたんでしょう?
あの人は、私に一切サッカーを教えてくれなかった」
親から与えられたものは少ない。両親から唯一もらったのは命だけだ。
それは返せるものじゃない。
Aは父親からサッカーを教えられることはなく、夢を与えられることもなかった。
彼女が欲したのは、鬼道や帝国イレブンと同じ立場になることであり、あの人から教えられるサッカーへの愛だった。
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suraimu471(プロフ) - 世界だけ。つまりFFIでは本気の主人公が見れるのだな。この時点で世界級ならほかのみんなよりも一歩分強くなりそう。 (2019年10月11日 8時) (レス) id: 8c6c5cc2e1 (このIDを非表示/違反報告)
カナト - お久です!!名前アリアからカナトに変更しました。これからは、カナトとしてよろしくお願いします。(ダイヤモンドダスト戦楽しみにしています。) (2019年10月10日 18時) (レス) id: baae3e32b1 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - こんにちは!おかえりなさい!と言っていいですかね!?更新待ってました(*´ω`*)これからも頑張ってください! (2019年10月9日 19時) (レス) id: d3fece9e75 (このIDを非表示/違反報告)
水銀(プロフ) - コメ返しありがとうございます!推しが2人なだけでみんな好きなのでどんなエンディングでもハイテンションで読ませていただきます!誰とも付き合わないというのもいいですねぇ!主人公らしくてとても好きです!! (2019年8月17日 2時) (レス) id: 78abf1c607 (このIDを非表示/違反報告)
水銀(プロフ) - ここまで一気読みしてしまいました!主人公の葛藤とても心に来ました…!続きとても楽しみです!!PS.落ちはもう決まっていらっしゃいますか?私、豪炎寺と鬼道推しでして… どちらか落ちだと良いなと勝手に思っております!是非考えてくださると嬉しいです! (2019年8月13日 1時) (レス) id: 78abf1c607 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:活字不足卍 | 作成日時:2019年8月8日 4時