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st黒


あれからどれだけ時間が経ったのか分からない。少しずつ腹の痛みが落ち着き、楽屋に戻ろうとした時。

ドンドンドンッ!!!
ドンドンドンッ!!!
ドンドンドンッ!!!

再びドアを乱暴に叩く音が。ドアの外から「クックックッ…。」と不気味に笑う声もした。

恐怖で声も出ず、腰が抜けて便座の隣に座り込んでしまった。汚いとか、そんなことを考える余裕もなかった。


「やめて…お願い…。」


両手で耳を押さえて音を遮断する。どこか頭の中では冷静な俺もいて、目だけは閉じないようにと我慢した。聴覚と視覚を遮ったらもしもの場合、抵抗しようにも抵抗できないと思ったから。

すぐに音は鳴り止み静寂に包まれたが、頭の中ではあの乱暴な音が鳴り響いていた。

誰か、助けて…。

そう願っていると控えめなノック音がした。さっきとはまるで違う。優しい音色に感じた。


「…北斗?北斗、いるの?」


この声、知ってる。慎太郎だ。
聞き馴染みのある優しい声が聞こえ堪えていた涙が溢れそうだった。


「北斗、鍵開けれる?」


さっきとは違うけど、また優しい声。樹だ。
ドアの向こう側に2人がいる。

なんとか腕を伸ばして鍵を開け、ドアが開くのを待つ。視界が広がり目の前には驚いた顔の2人がいた。
 

「じゅ、り…しん、たろ…っ。」


不安から解放されたくて2人の名前を呼ぶと慎太郎がすぐに座り込んで背中に手を回しさすってくれた。

拭いても拭いてもとめどなく溢れる涙。気づけば慎太郎の背中にいてあっという間に楽屋へ戻って来ることが出来た。

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作者名:あんこ | 作成日時:2022年8月7日 19時

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