第二章 ｾｲｶﾂ ページ9
彼女は、稲妻総合病院に入院した。野坂が事前に手配を進めていた為、到着したその日の内に一人部屋の病室に入り、入院という形をとることが出来た。
清潔で広く、看護師も多く定期検診もある。診療所という名前の方が似つかわしかったあの小さな病院とは比べられないほど環境は整えられている。
「体調は良いって聞いてるよ」
見舞いに来た野坂は、掛け布団の上に投げ出された腕を視線でなぞり、指先で止めた。伸びていた爪は既に短く整えられていた。
窓から青空が見える。日に照らされた彼女の顔色は以前に比べいくらか良くなった。点滴で栄養剤を打っているからだろう。
瞳に光が差し込んで、小さくなった瞳孔がはっきりと透けて見える。黄みがかった茶色い瞳は、しっかりと野坂に向いていた。
「暫くしたらリハビリも始まると思う。大変だけど、頑張ってね」
野坂の声に答えるように、彼女の視線が落ちた。ぎっしりと並んだ睫毛の間から、揺れる瞳が見え隠れする。
「…僕には君を救う責任がある。時間があるときはお見舞いに来るよ」
本心は知り得ないが、野坂は彼女がこれから先の事に対して不安を抱いていると仮定して、そんな風に微笑んで見せた。
目の前の少女は、その瞳に輝きを灯らせながらも依然として感情の有無を読ませない表情でいる。
彼女にあった筈のものは全て、アレスプログラムによって奪われてしまったのだ。
彼女の後遺症は、手術でも治らない。彼女の声も、笑顔も、心も。どんな医療技術をもってしても、そう簡単に返ってはこない。
「それじゃあ、今日は帰るよ。またね」
呼び止める声は無い。野坂は、何かを求め振り返ろうとする自分自身を制止し、平常心を保ったままで病室を後にした。
"自分は彼女に何を求めようとしている？"
誰かの問いが頭の中で反響している。
「…求めてなんかないさ」
人に何かを求めたりはしない。そんなもの、無意味に等しい。
「僕は、与える側の人間なんだよ」
誰かに向けて、野坂ははっきりとそう言った。
ラッキーカラー
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かなり - 私、輝さんの小説が大好きでいつも読み返していて、勇気をもらっています！これからも体に気をつけて頑張って下さい！応援しています！ (2020年4月26日 20時) (
レス) id: 698341d95b (このIDを非表示/違反報告)
輝(プロフ) - かなりさん» 沢山のコメントありがとうございます！本当に励みになります(*^^*)かなりさんも、どうか体調にお気をつけて過ごしてください。 (2020年4月26日 18時) (レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
かなり - この小説は、私を感動させてくれる小説です！この小説を作ってくれてありがとうござます！これからも体に気をつけて頑張って下さい！応援しています ！ (2020年4月20日 11時) (レス) id: 591368bcea (このIDを非表示/違反報告)
かなり - もお、続きが気になり、この後の展開が気になり過ぎて、ドキドキしながら読んでいます ！(≧∀≦)これからも、体には気をつけて、頑張って下さい！応援しています。！ (2020年4月14日 21時) (レス) id: 591368bcea (このIDを非表示/違反報告)
かなり - コメントありがとうございます。これからも頑張ってください (2020年4月10日 14時) (レス) id: dd5b3632db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：輝 | 作成日時：2019年8月8日 23時
