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お元気ですか?
以前お会いした時、何もお話ができなかったことを謝らせてください。
初めて面会に来た人をお父さんだと受け入れることも難しかったし、お父さんと離れた理由を知ったからこそどうしたら良いかわからなくて。
そして何より、わざわざ会いに来てくれたのに、お家に帰ることを断る形になってごめんなさい。
私は、秋から悠馬くんが通う高校の寮に住むことになりました。
一人での生活は大変だろうからと、悠馬くんが寮の管理人さんの部屋をお借りできるように話してくれたそうで、暫くは管理人さんと一緒に住むことになります。
高校への正式入学は来年の一年生に合わせてになるそうで、それまでの半年間は中学校レベルの知識を身に付ける補習を特別に受けさせてもらいます。
悠馬くんとは学年が一つ違うことになるのでそれが少し不安です。でも、一人で生活していけるように頑張ります。
それから、私への仕送りありがとうございます。ちゃんと通帳も受けとりました。大事に使います。
私は生きてきた時間の殆どを病院で過ごして、記憶もあやふやです。そんな中で、お父さんとお母さんと過ごした日々はうっすらでもちゃんと残っています。
お母さんに伝えられないのは残念ですが、お礼を言わせてください。
私を生んでくれてありがとうございます。今までの時間を取り戻せるくらい、精一杯毎日を過ごします。
いつか改めてお会いしたら、昔の話を聞かせてください。
目頭を押さえながら男はデスクに手紙を置いた。それは彼が初めて娘から貰う手紙だった。
こちらを敬う丁寧な言葉使いは、確かに彼が遠い昔娘に教えていたものだった。そして素直な幼い心のまま、娘は少女にまで成長した。自分を捨てた男をまだ父親と呼ぶほどに無垢だ。
そんな彼女がどのような大人に育っていくのか、一番側で見届けるのが自分でないことを酷く呪った。
最後に並ぶ文章を読み返す度に、病室のベッドに座る自分の娘がどのように笑うのかを想像する。そして虚しさだけが胸にこびりついた。
息を吐き天井を仰ぐ。野坂悠馬と名乗る少年を信じたことが、彼女を英才こどもセンターに預けたあの選択以上の後悔を生まないことを願うことしか、彼にはできなかった。
fin
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お読みいただきありがとうございます。
続編、書かせていただく予定です!
その他作品の案、リクエスト等ありましたらコメ欄に。
自粛が続く日々ですが、少しでも楽しんでいただければと思います。
ラッキーカラー
あずきいろ
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かなり - 私、輝さんの小説が大好きでいつも読み返していて、勇気をもらっています!これからも体に気をつけて頑張って下さい!応援しています! (2020年4月26日 20時) (レス) id: 698341d95b (このIDを非表示/違反報告)
輝(プロフ) - かなりさん» 沢山のコメントありがとうございます!本当に励みになります(*^^*)かなりさんも、どうか体調にお気をつけて過ごしてください。 (2020年4月26日 18時) (レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
かなり - この小説は、私を感動させてくれる小説です!この小説を作ってくれてありがとうござます!これからも体に気をつけて頑張って下さい!応援しています ! (2020年4月20日 11時) (レス) id: 591368bcea (このIDを非表示/違反報告)
かなり - もお、続きが気になり、この後の展開が気になり過ぎて、ドキドキしながら読んでいます !(≧∀≦)これからも、体には気をつけて、頑張って下さい!応援しています。! (2020年4月14日 21時) (レス) id: 591368bcea (このIDを非表示/違反報告)
かなり - コメントありがとうございます。これからも頑張ってください (2020年4月10日 14時) (レス) id: dd5b3632db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:輝 | 作成日時:2019年8月8日 23時