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「きっと学校の制服も似合うだろうね」
「そうだと嬉しいです。私も悠馬くんと同じ服を着られるんですね」
終始笑顔を浮かべる君は幼げで、新しい世界へ踏み出すことに心から歓喜しているのが見て取れる。けれど籠の外は君が思うほど良いものじゃない。
自由だからこそ君は無防備になる。広すぎる世界は時に君を傷つける。無垢な君の色を穢れで染めてしまう。
「なんだか今になって緊張してきました」
「どうして?」
「退院したらもう悠馬くんと会えなくなると思っていたからです。まだ一緒に居られるのが、すごく嬉しくて」
ほら。余りに無防備な君の言葉に笑いが溢れる。端から見れば何も知らない君の、無知が故の幼稚な台詞だ。それでも僕にとっては特別で、堪らなく愛しい言葉だから。
「僕も嬉しい。烏丸さんが僕と居ることを選んでくれて」
誰にも言わない、言ったことの無い素直な僕の言葉を贈るよ。
「…もし、烏丸さんが望んでくれるなら。僕はずっと君の側に居たい。新たな一歩を踏み出す君を支えたい。
僕にこれからもずっとその笑顔を見せていて欲しいし、僕の名前を呼んでいて欲しい。何より、僕に君を幸せにさせて欲しい」
欲張りかもしれない。でも僕はもう与えるだけの人間じゃない。自分の求めているものを明確に知ることを漸く覚えたから。
「君を、僕にくれないかな」
真っ直ぐに、君のキラキラとした宝石の瞳を見つめ告げた僕の言葉。跪いたり、手を取ったりキスをしたり。そんなロマンチックなことは僕にできない。
だって僕も初めてなんだ、人にこんな想いを抱くことなんて。不慣れな表情を誤魔化すために、わざと笑顔を浮かべて見せる。すると君は案外簡単に、ふわりと笑って花束を抱き締めて言う。
「私には悠馬くんが必要ですから。突然居なくなってしまったら、きっと立ち直れないです」
「どうだろう。烏丸さんは強いからな」
「悠馬くんが居てくれたら、もっと強くなれますよ」
きっと君はまだ、僕の言葉の重みを完全に理解していない。僕が、君に僕の人生全てを捧げたって構わないなんて気でいることを。
それでも良い。今の君が、僕という"鳥籠"に入ることを選んでくれるなら。
「だから、私は悠馬くんと居ることを望んでいます」
僕はきっと君を幸せで満たしてあげる。留まるも逃げ出すも君次第。
だから僕から離れていくその日まで、ずっと僕にその笑顔を見せて。その柔らかな声で、僕を呼んでいて。
ラッキーカラー
あずきいろ
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かなり - 私、輝さんの小説が大好きでいつも読み返していて、勇気をもらっています!これからも体に気をつけて頑張って下さい!応援しています! (2020年4月26日 20時) (レス) id: 698341d95b (このIDを非表示/違反報告)
輝(プロフ) - かなりさん» 沢山のコメントありがとうございます!本当に励みになります(*^^*)かなりさんも、どうか体調にお気をつけて過ごしてください。 (2020年4月26日 18時) (レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
かなり - この小説は、私を感動させてくれる小説です!この小説を作ってくれてありがとうござます!これからも体に気をつけて頑張って下さい!応援しています ! (2020年4月20日 11時) (レス) id: 591368bcea (このIDを非表示/違反報告)
かなり - もお、続きが気になり、この後の展開が気になり過ぎて、ドキドキしながら読んでいます !(≧∀≦)これからも、体には気をつけて、頑張って下さい!応援しています。! (2020年4月14日 21時) (レス) id: 591368bcea (このIDを非表示/違反報告)
かなり - コメントありがとうございます。これからも頑張ってください (2020年4月10日 14時) (レス) id: dd5b3632db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:輝 | 作成日時:2019年8月8日 23時