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「初めてなんだ」
彼女の話を一通り話した後も、野坂の声は変わらず深刻な色のままだった。宮野はやっと野坂が自分を呼び出した理由を理解した。
「今まで持ったことの無い感情だから、どうしたら良いのか分からないんだ」
野坂にとって、恋心は甘いものでもなんでもなく、寧ろ辛く苦しい、一つの疾病のようなものなのだ。
「彼女は純粋に僕を慕ってくれているのに、僕はこんな目で彼女を見ているんだと思うと…嫌気がして」
他人から見れば大した悩みでなくとも、そういった感情とかけ離れた人生を送ってきた彼にとっては大きな障害である。
宮野は胸の辺りがぎゅっと苦しくなるのを感じた。彼が相談相手に何故自分を選んだのかははっきりとしないが、彼を助けなければ、と瞬時に思考が告げた。
「…そっか。うん、難しいよね」
「…うん」
「でも、野坂君がそんなに不安がること無いよ」
口に出しておいて、あまりに稚拙な言葉が恥ずかしかった。それでも野坂は真っ直ぐな眼差しで宮野を見るので、それに応えない訳にはいかなかった。
何より、野坂が年下の自分を頼ってくれることが純粋に嬉しかったのだ。
「きっと、その子は辛い思いをしてる。思うように体が動かなくて、話せなくて…私と同じように」
宮野はそっと自身の胸に手を当て、ふわりと笑った。幼い頃にプログラムの被害を受けた彼女もまた、長い間入院生活を送っていた。そんな空虚な日々にも、幸せな記憶が刻まれている。
「だから、私にとっての凌兵と同じように、その子にとって野坂君はとても大きな存在なんじゃないかな」
「でも、茜さんと灰崎君は幼馴染みだ。烏丸さんにとっての僕とは違う」
「そんなの関係ないよ。きっと大切に思ってるよ、野坂君のこと」
優しい声で紡がれる宮野の言葉には説得力があった。だから野坂は彼女を呼んだのだ。
彼女は野坂よりずっと多くのことを知っている。普通の人間が生まれながらに持つ沢山のことを。
「だから、その子が好きって気持ちから逃げないで。ちゃんと向き合ってみて？」
「向き合う？」
「うん。…例えば、野坂君はその子のどこが素敵だと思う？いつから惹かれ始めたの？」
野坂の意識が、過去の記憶に引き込まれる。
人は過去のことを忘れたりはしない。単に思い出せないだけだ。
野坂は空になったグラスを見つめ、遠い記憶の中にゆっくりと身を沈めていった。
ラッキーカラー
あずきいろ
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かなり - 私、輝さんの小説が大好きでいつも読み返していて、勇気をもらっています！これからも体に気をつけて頑張って下さい！応援しています！ (2020年4月26日 20時) (
レス) id: 698341d95b (このIDを非表示/違反報告)
輝(プロフ) - かなりさん» 沢山のコメントありがとうございます！本当に励みになります(*^^*)かなりさんも、どうか体調にお気をつけて過ごしてください。 (2020年4月26日 18時) (レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
かなり - この小説は、私を感動させてくれる小説です！この小説を作ってくれてありがとうござます！これからも体に気をつけて頑張って下さい！応援しています ！ (2020年4月20日 11時) (レス) id: 591368bcea (このIDを非表示/違反報告)
かなり - もお、続きが気になり、この後の展開が気になり過ぎて、ドキドキしながら読んでいます ！(≧∀≦)これからも、体には気をつけて、頑張って下さい！応援しています。！ (2020年4月14日 21時) (レス) id: 591368bcea (このIDを非表示/違反報告)
かなり - コメントありがとうございます。これからも頑張ってください (2020年4月10日 14時) (レス) id: dd5b3632db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：輝 | 作成日時：2019年8月8日 23時
