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旧月光エレクトロニクス本社ビル内
「被験者としてアレスプログラムに参加した子供たちの情報が、全てこの中に掲載されていました」
野坂は手渡されたファイルに素早く、丁寧に目を通していった。しかし、次第にその手の動きは緩やかになっていく。
「ですがこの資料、既に押収したデジタルデータのリストと内容に変わりがありません」
私達もそう思ったのですが。視線を上げないまま、野坂は目の前のスーツを纏った男の言葉に耳を傾けた。
「念のために二つのデータを照らし合わせたんです」
彼は月光エレクトロニクスが起こした一連の騒動、事件の調査担当者だ。野坂達ももう何度も顔を合わせており、今回連絡を寄越したのも彼だった。
「すると、デジタルデータには欠けている情報があった」
「欠けている？」
「紙媒体には存在して、元々私達が得ていたデータには存在しなかった被験者の名前があったんです」
「…人数は」
「一人だけです」
野坂はまた忙しく手を動かした。野坂とは何の面識も無かったであろう幼い子供達の顔が、次々に移り変わっていく。珍しく、彼の顔に少しの焦りが滲んでいた。
「全員に援助金を送れていると思っていたのに…」
彼ら側のデータに欠けた部分があったということは、つまりその被験者は政府からの援助を受けられていないということになる。
たった一人であったとしても、事件が発覚してもう1年以上が経つのにも関わらず被害者を見落としていたなどあってはならない。
「その被験者の名前は、烏丸A」
「烏丸…」
「昔の貴族から分裂した一派の名だろう」
珍しい苗字だと目を開く西蔭に、野坂がさも当たり前のことのように答える。
リストはアルファベット順に並べられている。だとすればその名はもうすぐ現れるはず。
次の1ページ。捲った場所に、目当ての名前を見つけた。
「…！」
「ありましたか」
西蔭が身を屈めリストを覗き込む。そこには、緊張したような表情でカメラを見つめる幼女が居た。
整った顔立ちだ、と頭に浮かんだことを咳払いで追い払う。続けて、手を止めたままと野坂の横顔に視線を向けた。
しかし彼は、ただ一点を見つめたまま口を半開きにして黙っている。
「…野坂さん？」
「…彼女だ」
「僕は…彼女を知っている」
野坂の瞳が揺れていた。リストを握る手が今すぐに崩れ落ちそうな程震えているのを、西蔭が見逃すはずはなかった。
ラッキーカラー
あずきいろ
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かなり - 私、輝さんの小説が大好きでいつも読み返していて、勇気をもらっています！これからも体に気をつけて頑張って下さい！応援しています！ (2020年4月26日 20時) (
レス) id: 698341d95b (このIDを非表示/違反報告)
輝(プロフ) - かなりさん» 沢山のコメントありがとうございます！本当に励みになります(*^^*)かなりさんも、どうか体調にお気をつけて過ごしてください。 (2020年4月26日 18時) (レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
かなり - この小説は、私を感動させてくれる小説です！この小説を作ってくれてありがとうござます！これからも体に気をつけて頑張って下さい！応援しています ！ (2020年4月20日 11時) (レス) id: 591368bcea (このIDを非表示/違反報告)
かなり - もお、続きが気になり、この後の展開が気になり過ぎて、ドキドキしながら読んでいます ！(≧∀≦)これからも、体には気をつけて、頑張って下さい！応援しています。！ (2020年4月14日 21時) (レス) id: 591368bcea (このIDを非表示/違反報告)
かなり - コメントありがとうございます。これからも頑張ってください (2020年4月10日 14時) (レス) id: dd5b3632db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：輝 | 作成日時：2019年8月8日 23時
