染谷探偵事務所の日常 ページ6
独断といえど仕事出来ているのだから傷害事件などタブーである。勇次郎にぶっ殺される
だがまあ、あいつはスフレオムレツ作ってやれば大体の事は釣れる
愛蔵は掴んでいる腕をひねりあげ、胸中にある言葉をつらつらと言ってみせた
「お前、浮気して俺の依頼者を傷つけてる癖に自分は悪くないってつけあがる気なのか?此奴はそんな悪い奴じゃないはずだろ!?お前が1番分かってるんじゃないのか!?」
「.......は、ぁ.......?、」
「柴崎!ちょ、もう.....もういいから!」
愛蔵はその一言に忠実に従った
半ば乱暴に離してやると依頼者のAの背中で明後日の方向を向く
睨みつけられた気がするが気のせいと思っておこう
「.....慰謝料は、いくらでも払うから」
そうか、じゃあ資産全部差し上げろ
愛蔵はまだ冷めない怒りを冷まそうと浮気男が搾り取られる様を想像していた
ざまあ、だ
しかしAは
「お金なんか.....要らないわよ.....そんな事よりあんたが.......」
「あ゛?」
何かを言いたそうにもじもじするAの様子に神経を逆撫でされたらしい浮気男は怒りを孕んだ声を出した
Aは悲しそうにふるふると睫毛を揺らした後、目尻をつりあげて鋭い目付きへと変貌した
「.......っ!!もういいわ!二度と私に近づかないで!!」
ぷつん、と何かが切れた音が、愛蔵には聞こえた気がした
Aは持っていたウエストポーチを相手に思いっきり叩きつけるとピンヒールを脱ぎ捨てて廊下をかけて行った
「おいおい嘘だろ…っ依頼者!!」
愛蔵はウエストポーチとピンヒールを掴むと慌ててあとを追った
脱兎のごとく走るAは高校生時代50メートルが7秒切ってる愛蔵ですら追いつけない程に速かった
流石に愛蔵も慌てた
ビルを駆け下り、玄関を従業員に困ったように注意されながらも走り出ると植え込みに背中を預けて啜り泣くAを発見した
はぁぁ、と深く息を吐くとAの前にしゃがみこむ
「……靴、何で脱いだんですか」
数秒たって返事が返ってくる
「……邪魔…だったから」
嗚咽混じりに返ってくる鈴の音のような声が痛ましい
女は苦手で、むしろ嫌いだ。でもこういう自分で自分を痛めつけて傷つく奴はもっと嫌いだ
……昔の小さな少年だった自分と、重なる気がして
だから愛蔵は、嫌いでも手を焼いてしまうのだ
それが依頼者なら、仕事として尚更
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메이 - 全部読みました.ᐟ とっても面白かったです.ᐟ これからも頑張ってくださいね𓂂𓏸 (2022年12月9日 15時) (レス) @page49 id: 36c85dd659 (このIDを非表示/違反報告)
ソーダ(プロフ) - じゃすみんちゃさん» ひえ!全部!ありがとうございます嬉しいです(TT)更新頑張ります応援嬉しいです!! (2022年1月23日 2時) (レス) id: babb449235 (このIDを非表示/違反報告)
じゃすみんちゃ(プロフ) - 123全て楽しく読ませていただきました!最高です!次の更新も楽しみにしてます!頑張ってください! (2021年11月3日 16時) (レス) @page48 id: 97e0b8497b (このIDを非表示/違反報告)
ソーダ(プロフ) - 翔花さん» 全部読んでくださったのですか!?ありがとうございます!!コメントも頂けて作者は幸せです! (2021年8月12日 18時) (レス) id: babb449235 (このIDを非表示/違反報告)
ソーダ(プロフ) - 名前さん» 神......なんどありがたいお言葉……わたしよりもあなた様が神です……ありがたや… (2021年8月12日 17時) (レス) id: babb449235 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ソーダ | 作者ホームページ:
作成日時:2019年8月30日 2時