どうしようもないディスターブ『勇次郎』 ページ19
「あの…えと……ごめんなさい……」
ドアを開け、顔だけ部屋へ乗り出すようにする
彼は微笑み、窓の月光に照らされ息を飲むほど美しかった
まるで月の住人、みたいな
「うん、悪い子。……ほらおいで」
聞いてしまった罪悪感に苛まれ、大人しく彼の元へ寄ると
「…!?ひゃ!!」
腕を引き寄せられ、気づけば彼の腕に包まれていた
腰と肩に手を回され、無防備にも額にキスを落とされる
今日は経験したことの無い、いつか夢にまで見ていた小説のような事ばかり起きていて、彼と会ったことでさえ、今でさえ、夢なのではないかと思い始めてしまう
「染谷さん……!離してください!」
「どうして?こんなに可愛くて堪らないのに、離すなんてどうかしてる」
……どうしてそんなことを言うの?
さっきあったばかりなのに、お互い何も知らないはずなのに
私を、誑かしてお金とか取るつもりなのだろうか。それとも体?それとも……このお店?
いやでも。あんな怪我で……
「私…財産とか……そんなに持ってませんよ……?」
よくあるハニートラップ。と言うやつだろうか
こういう時は綺麗な人がその魅力を多彩に使い、相手を落として財産だけ持って夜逃げ……なんてことがあるのだろう
それに、先刻の電話だって___
……こんなにブスで、可愛くもない自分が
彼の顔を見ることが出来なかった暫くするとクッ……という堪えるような笑い声がした
え?
彼は口元を抑えてクスクスと笑っていた
「ああおかしい!……君は、僕が金でもたかりに来た卑屈な奴だと思ってたの?」
見透かされている
未だ笑い続けている染谷さんから嫌な気配を感じて、毛穴から汗が吹きでて背中が冷たく感じた
何も言えない私の目を見つめ、頬に手を添える
「……否定しないの?なんて子なんだろ……なんかもう、堪らないね。可愛すぎる」
可愛い……?
この人はどこまでが本音で、どこまでが偽りの言葉なんだろう
「もう、やめてください……」
ぐ、と腕に力を加えて染谷さんを押し返す
染谷さんの笑い声が止まった
「男の人はいつもそう……なんですよね…自分勝手…!」
『お前なんか大して可愛くもねーよ』
『可愛いよAは。でさ、今月ちょっと足りなくてさ___』
都合のいい時だけ人を可愛がる
思ってもないくせに
自分の心だって大して綺麗でもないくせに
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메이 - 全部読みました.ᐟ とっても面白かったです.ᐟ これからも頑張ってくださいね𓂂𓏸 (2022年12月9日 15時) (レス) @page49 id: 36c85dd659 (このIDを非表示/違反報告)
ソーダ(プロフ) - じゃすみんちゃさん» ひえ!全部!ありがとうございます嬉しいです(TT)更新頑張ります応援嬉しいです!! (2022年1月23日 2時) (レス) id: babb449235 (このIDを非表示/違反報告)
じゃすみんちゃ(プロフ) - 123全て楽しく読ませていただきました!最高です!次の更新も楽しみにしてます!頑張ってください! (2021年11月3日 16時) (レス) @page48 id: 97e0b8497b (このIDを非表示/違反報告)
ソーダ(プロフ) - 翔花さん» 全部読んでくださったのですか!?ありがとうございます!!コメントも頂けて作者は幸せです! (2021年8月12日 18時) (レス) id: babb449235 (このIDを非表示/違反報告)
ソーダ(プロフ) - 名前さん» 神......なんどありがたいお言葉……わたしよりもあなた様が神です……ありがたや… (2021年8月12日 17時) (レス) id: babb449235 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ソーダ | 作者ホームページ:
作成日時:2019年8月30日 2時