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Aの綺麗な声を確かめるように、最後まで丁寧に歌い上げる。
伴奏が止み 目を開けると、俺の気持ちは驚くほどにすっきりしていて。
「……ふー、」
ゆっくりと息を吐いたAと合わせるように、俺の口角は上がっていった。
やっぱり、たった半音だな。でもそれに合わせられるのは 俺だった。
「歌いやすかった、です」
隆二「当たり前だよ。お前の声に一番合うのは、俺と臣だ。」
「……」
隆二「お前はお前で、この2年間必死だったんだろうけど、俺らも お前の声に負けないようにするのに必死だった…
…だから、Aのその歌声が 努力の上に成り立つもんだってわかって 安心した。」
ずっと心にあった、Aの実力への嫉妬にも似た憧れ。
俺がどんなに努力しても手に入らないものなのかもしれないと思ってた。
でも、努力の限界の 更に先がまだあるのだ。
隆二「年末の飲み会の時、お前に言った事だけどさ」
「…なんでしたっけ、」
隆二「お前のこと “独りぼっち” って言ったこと」
「ああ、…」
隆二「…悪かったな。」
「……」
隆二「ずっと意地になってたけど、お前の思う通り、俺はAのこと 実力で認めてた」
「…、」
隆二「ずっと一緒に歌い続けてた俺が、お前は独りぼっちだ、とか言ってごめん…」
「、いや…」
隆二「いつだって独りで歌ってる事はなかった。俺もお前も…、臣も。
どんなに分かり合えなくても、ステージで歌っているときは 3人一緒だったんだよな。」
「…そうですね……」
隆二「Aが 俺らと一緒にレコーディングしてくれたあの日、本当はスゲー嬉しかったよ。3人同じ空間で音を作れる安心感とパワーが半端なかった。
それに今の俺たちを繋ぐのは、やっぱり歌しかないしな」
「私も、2人と一緒にレコーディングしてて、とても安心しました。いつも想像の中で合わせてた2人の声がすぐ近くに聞こえて、思うままに自分の中で2人に合わせる為に音を変えていくことが出来た。
ずっと避けて来たけど…、一緒に音を作るのって本当に大事なんだと思いました。
今まで、そんな事にも気付けず、一人でやってて本当にすみませんでした」
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作者名：とまと野郎
| 作成日時：2014年11月22日 22時
