新入生 ページ6
◇
そして現在、16時10分。
音駒高校第2体育館に爆弾が投下された。
「目標は、全国制覇だ。」
体験入部の人達が全員集まったことを確認すると、突如そう言い放つうちの部長。
まさか体験期間中にそんなことを言い出すと思っていなかった私は、驚きから大きく目を見開く。
当然、体験のため軽い気持ちで集まってきた新入生は、次々に驚きの声を上げ、やっぱりやめようかなんて戸惑った様子で話し始める。
「俺たちは本気で日本一を目指す」
「本気でやらない奴はいらない」
わざと追い出そうとしているのかと疑ってしまうほど追い打ちをかける黒尾に、私まで戸惑いを隠せず、なんでこんなやり方…！と私は夜久と海に駆け寄る。
しかし2人は、黒尾のやり方には賛同しているようで、少し困った表情で私を見返すだけだった。
◇
主将の挨拶後、一年生は一人も残らなかった。
「黒尾、なんであんなキツイ言い方したの」
黒尾が体育倉庫に入ったのを見計らい、文句を言うようにそう詰め寄ると、普段のヘラヘラとした態度で、そんな怒るなよ〜と私を諌めた。
「部員集め。本気で頑張ってたのは私だけ？」
黒尾も新入部員欲しいって言ったじゃんと、なんだか悲しくなってきた私は、黒尾から顔を逸らして下を向く。
「…俺たちは全員、本気でバレーやってる」
ピリついた空気の中、やっと発せられた声に顔を上げれば、普段のおちゃらけた雰囲気とは違う、真剣な顔つきの黒尾と目が合った。
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作者名：西川あや | 作成日時：2022年10月7日 1時
