新入生 ページ5
◇
そうと決まったら早かった。
虎が発した一言により、長身選手が欲しいやら、セッターが欲しいやら、次々に希望が溢れ返り、『バレーボール部員を大量にゲットしよう大作戦』と名付けて、新入生歓迎会に向けて動き出した私たち。
新入生歓迎会では主に学校の紹介を行う訳だが、そのプログラムにはもちろん部活動紹介も組み込まれている。
「おー、気合い入ってんな」
新入生歓迎会当日の朝、一年生に勧誘のビラを配ろうと昇降口の前に立っていると、眠そうに欠伸をする黒尾が現れる。
「あったり前じゃん！
最低でも10人は入れたいし」
マネも増やす！と意気込んでガッツポーズしていると、何か言いたげな顔をして黙る。
そんな黒尾を不審に思い、なにかと聞き返そうとすると、バレー部？と少し派手目な3人組が話しかけてくれた。
「そうバレー部！もしかして経験者？」
「俺、体育でやったことあるよ！」
「てか先輩マネージャー？
俺、バレー部に決めよっかな〜」
あまりの馴れ馴れしさに若干引いてしまって申し訳ないが、気になるならぜひ入って！と笑うと、他の奴らにも広めとくと嬉しいことを言って去っていく1年生。
「これで3人確保だね！」
良い宣伝にもなったな〜と喜ばしい気持ちでいっぱいの私は、この時、暗い顔をする黒尾に気がつけなかった。
◇
「現在、男子バレー部は…」
やっと始まったかと思えば、直ぐにバレー部の番が来る。
普段より真面目な雰囲気を醸し出す黒尾は、ステージの真ん中で新入生たちに話しかけ、私たちはその後ろに並んで待機する。
「…おいA、もっと自然に笑え」
お前はニコニコしていればいいという夜久の助言により、黒尾が話している間、ずっと笑っている私。
逆に何もないのに笑ってて気持ち悪くないのかなと疑心暗鬼になっていると、夜久がコソッと耳打ちしてくる。
「この後、16時より第2体育館で体験を行います」
新入生のみなさん、選手もマネージャーも大募集ですので、ぜひバレーボール部に来てくださいという一言で、やっと表情筋が解放された。
「おつかれみんな！」
そう舞台裏で声をかければ、心底疲れた顔の研磨と、対照的に2組の女子と目が合ったと胸を抑える虎。
相も変わらず正反対の2人を見て、この子らも先輩になるのかぁと、私たち3年は一抹の不安を抱いた。
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作者名：西川あや | 作成日時：2022年10月7日 1時
