057 小人 ページ7
合宿が始まって、2日3日と順調に過ぎた。
練習も怪我無く進み、私たちの仕事も特別何かあるわけでもなかった。
だが、最終日の前の日の朝、私は一つ、やってしまった。
寝ぼけて、自分のメガネを踏んでしまったのだ。
まあ日中はコンタクトだし、コンタクト外した時だけメガネをつけていたから練習の間は大丈夫なんだけど……。
少し、壊れてしまったのはショックだ。
そして、最終日前日の夜。
寝るギリギリまでコンタクトをしていたかったが、あまりにも目がしょぼしょぼしたので外してしまった。
だが、メガネはない。
仕方ない。今日は仕事も終わっているからこれで乗り切るしかない。
「佐藤さん、これ、明日の練習試合についての紙。武田先生からです」
「……その身長とその声は月島くんか」
「うわ、眉間に皺すごいですよ」
自動販売機で飲み物を買っていると、月島くんが武田先生からのおつかいで私のもとへ来た。
今の私は視力が0に等しいので、声、身長、体格等で判断するしかない。
それでも、頑張って顔を見ようと目を細めると眉間に皺が寄る。
「佐藤さん、もう年なんだからー、皺、戻らなくなっちゃいますよー?」
「まだ若いんですけど! 18歳なんですけど!」
「ボクの3つも上じゃないですかー」
「今の3年生と同じ年ですけど?!」
ことごとく煽ってくるスタイルの彼に、いつも私は乗ってしまう。
こんなガキに……悔しい……っ!!
「ほら、書類。確認しなくていいんですか?」
「確認する。貸して……こら、もうちょっと下げて」
「なんでですか? あ、小さくて取れないのかー」
あははーと笑って私の頭上でひらひら紙を舞わせるノッポメガネ。
これは有罪判決でよろしいか? よろしいな。ギルティだ。
「すっごい楽しそうな顔してるねノッポくん」
「はい、楽しいですね。佐藤さん、この中で一番小さいじゃないですか」
「いや、私女だからね。男より小さいのは当たり前でしょ。男の中で小さいやつを構えばいいじゃない」
「でも清水先輩は日向より背高いので」
――佐藤さんは純粋に小さいんですよ。
ニコーっと笑って言う月島くんは心の底からひねくれているんだろう。
一通り、私をいじめつくした彼は飽きたのかロビーのソファに座り普通に書類を見せてくれた。
最初から見せろや。
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ぴえん - めっちゃおもろくてもうとにかく好きです。ー日本語が変なのは気にしないでくださいー (2020年8月3日 10時) (レス) id: 243282b2cc (このIDを非表示/違反報告)
西(プロフ) - しらすパンさん» ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。頑張ります! (2020年5月31日 23時) (レス) id: c8d57ac98d (このIDを非表示/違反報告)
しらすパン(プロフ) - とても面白くて一気読みしてしまいました!!続き楽しみにしてます!更新頑張ってください! (2020年5月29日 21時) (レス) id: d0609b57e9 (このIDを非表示/違反報告)
西(プロフ) - みずきさん» ありがとうございます。今この時世ですからね、お互いステイホームで頑張りましょうね! (2020年5月17日 19時) (レス) id: c8d57ac98d (このIDを非表示/違反報告)
みずき(プロフ) - コメ失礼いたします!一からすべて読ませていただきました。とてもおもしろかったです!体調に気をつけて更新頑張ってください。応援しています!(*´∀`) (2020年5月17日 0時) (レス) id: bace071e6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西 | 作成日時:2020年5月16日 21時