県立烏野高等学校、事務職員です。【２】

068　接触 ページ18

――５月６日朝



　烏野総合運動公園、球技場に到着する。

　昨日はトランプの後、戻ってすぐ寝た。

　だからか、すっきりしている。



　「……先生よ」

　「……ハイ」

　「俺タバコ臭くねえかな？ 湿るくらいにはファブリーズして来たんだけど」



　烏養さんが緊張の面持ちで話し始めたと思えば、すごくどうでもいいこと。



　「大丈夫！ ラベンダーの香りですよ！」

　「めっちゃトイレの匂いですよ」


　武田先生と私がフォローを入れると無香料にすればよかったと呟く烏養さん。

　タバコ辞めたらどうでしょうか。





　「集合！」


　澤村くんの掛け声で整列する部員たち。

　もう音駒の子たちは整列していた。

　あ、一番端の子ドラッグストアにいた子だ。

　あと、やっぱりプリン頭の子がいる。日向くんも気付いたみたい。


　「挨拶ッ！」

　「お願いしアスっ！！」

　「しアース！！」



　互いに礼をして体育館に向かう。

　私が体育館へ入ろうとした瞬間、日向くんがプリン頭の子に話しかけに行くのが見えた。

　”研磨”と呼ばれたその子は日向くんの勢いに押されている。

　同じ１年生なのかな？

　１度会っただけで仲良くなれるなんてすごいコミュニケーション能力だ。影山くんに分けてあげて欲しい。

　そんな研磨くんの後ろからモヒカン頭の男の子がメンチを切ってくる。

　……校則的に大丈夫なの？ プリンもいるし、東京って怖い。

　何か田中くんも出てきてごちゃごちゃやってたけど、スガくんと音駒のお母さんが出てきて丸く収まった。

　よかったよかった。








　「なあ」

　「……あ、私？」



　ジャグとボトルの準備をしていると、後ろから話しかけられた。

　振り向くと、ドラッグストアにいた背の高い子。

　なあ、なんて馴れ馴れしく話しかけてきたけど、私のこと同い年か年下だと思ってるなこいつ。



　「ドラッグストアで会ったけど、覚えてる？ 烏野のマネージャーだったんだな、何年？」

　「覚えてるよ、何年だと思う？」

　「んー、タメで話してるってことは３年かな」



　相変わらず胡散臭い感じで話しかけてくる。

　その貼り付けたような笑顔には裏が隠されていそう。



　「ぶっぶー、私、マネージャーじゃなくて職員なんだよね」

　「……えっ」

　「だから、君よりも年上でーす」

　「……マジか、すんません」

　「分かればよろしい」

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