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ステージ袖。
ヘッドセットをつけながら、
本番直前になってふとスマホを見る。
A、今何してるのかな。
疲れてない?
元気に過ごせてるかな…、なんて。
本番前なのに。
これから大切なファンの前に行くって言うのに。
どうしてかAのことが頭に浮かんできてしまった。
どこかで、嫌な予感がして。
それが当たらないでほしいと願った。
そして、
ライブが終わった夜。
ホテルの乾いた空気の中で、
ひとりベッドに座る。
どうしても心配で送ったメッセージには、
普段通りの字面が返ってきた。
ちゃんと自分の時間を楽しんでくれてる。
そう思うと安心した。
でも、
どこか違和感があって。
まるで早口で捲し立てるような返信が、何かを取り繕っているよう。
だけど…。ね?
彼女のペースを優先しよう。
Aが言う『明日でいい?』には、きっと何か理由がある。
でも。
「声……聞きたかったな」
と胸の奥でこぼれた言葉が、
自分でも驚くほど寂しい音をしていた。
ソファに座って、
髪を触りながらふっと小さく笑う。
「……俺、どんだけA好きなんだよ」
あんなに達成感のあるライブをした後なのに、
Aの声が聞けないと物足りなさを感じてしまうなんてと思って、
思わず声に出してしまう。
Aは、
無理して電話したら悪いかなとか、
忙しいのに迷惑かもって考えがちだから。
俺がしつこいくらい言ってあげないと、
自分の気持ちを後回しにしちゃうでしょう?
本当に映画を楽しんでいるんだよね?
俺に気を遣っているわけじゃない?って聞きたくなってしまうんだ。
Aは、
俺が側にいないときほど無理をする。
今までのあれこれを思い出すと、胸がぎゅっと痛む。
「A…ほんと頼むから。何かあったらすぐ言ってよ……」
「一人で苦しんでるの、辛い思いしてるの…もう嫌だからね…」
口にした独り言は、
部屋の中に静かに落ちた。
明日、昼にはまた連絡しよう。
今度は声が聞けたらいいな。
俺はそう思いながら、ベッドに横になる。
どうせAと話ができないなら、もう寝てしまおう。
じゃないとずっとAのことを悶々と考えてしまいそうだから。
彼女に会いたい気持ちが、
今日の疲れよりもずっとずっと。
大きく膨らんでいた。
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作者名:Pino | 作成日時:2025年10月30日 0時


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