検索窓
今日:17 hit、昨日:25 hit、合計:7,641 hit

ページ24




車に乗ると、
窓の外でAがゆっくり手を振っていた。

スマホ越しじゃない、目の前の彼女の姿。
その距離がどんどん遠ざかっていく。


見えなくなった瞬間、
胸の奥にぽっかり穴があいたみたいで。


「……やっぱ離れるの、嫌だな」


なんて思わず呟いてしまった。


駅に向かう途中、
Aの今朝の仕草とか、
俺の隣で小さく笑った顔とか、
靴を履いてる俺をじっと見てた顔とか。

全部、何度も脳内再生される。


新幹線に乗ってからも同じで。
窓の反射に顔が映ると、想像以上に表情が緩んでいる自分がいた。


A、寂しくないかな。
ちゃんとごはん食べて、元気に過ごしてるかな。
今日は冷えるけど…あったかい格好して過ごしてるかな。

ただの心配では収まらないくらい、
頭の中はAのことでいっぱいで。
これからライブだっていうのに、
ライブのことなんて考えられないくらいで。

あの子の全部を知りたくなる気持ち。
少しでも離れると、
昨日まで当たり前だった一緒の朝が恋しくなるんだもん。



次の日も。
スタッフの方々が会場の確認や衣装のチェックをしている中で。

俺はAになんと送ろうか、
いつ送ろうかと考えてしまって。


まだ朝が早いから…とか、
Aの負担にならない言葉でとか。
普段はほとんど連絡を取り合わず、直接会ったときに話すのに、
どうしてか連絡したくなってしまう。


彼女は俺の帰る場所をいつも守ってくれている。
心から安心できる居場所を、
一人の人間として気負わずにいられるようにって。

優しい笑顔も、笑い声も。
どれも愛おしいその姿を思い出して、
連絡したくなるのかな。


でもAは、
俺が頑張っていることをすごく見ていてくれる人でもあって。
それを気にして寄り添ってくれる。
負担をかけないようにって考えて行動する人だから。

頑張り屋さんで、
自分の体力や体調を顧みずに無理をするところがある。

だから…
心配させちゃうかも。って考えてしまうような連絡はしちゃいけない。
俺が彼女の負担になっちゃいけないって思う。

ちゃんとたくさんご飯を食べて。
家が汚くなるとか気にせず、せっかく一人なんだからゆっくりして。
もしも寂しいと思ってくれているなら、遠慮せずに教えて。

そんな気持ちが溢れるけれど。

長文を送ると、返信ちゃんとしなきゃって思うはず。
だから、短い言葉に全部込めた。


今日も大好き。
離れているから、少しくらい心配させて。
頼ってよ。…って。








・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (11 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
21人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Pino | 作成日時:2025年10月30日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。