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もう夜が明けそうな頃。
体の奥が妙に熱いことに気がついた。
喉の痛みだけだと思っていたのに、
今は全身がだるくて、力が入らないような。
指先まで重く感じて、
息をするたびに胸の奥が熱を帯びていく。
あの後、いつの間にか意識が微睡んで眠りにつき。
喉の痛みで熟睡はできなかったけれど、うとうとと過ごしていた。
小さな寝息を立てる紫耀を感じて、
どこか安心して過ごせて。
『……熱、あるのかな』
自分の額に手を当ててみる。
火照った肌の感触に、はっとして目を閉じた。
まるで体の中で小さな炎が燃えているみたい。
体の芯が熱を持っているのに、
背筋がぞくぞくして寒い。
ブランケットを肩まで引き上げても、
震えは止まらなかった。
喉の奥が腫れているのがわかる。
唾を飲み込むたびに、涙が溢れてきて。
苦しくて、怖くて、
でも…紫耀を起こしたくなかった。
『……大丈夫、だから』
誰に言うでもなく、小さく呟いてみる。
そう。きっと大丈夫。
紫耀に心配をかけるほどじゃないし。
でもふと。
“ただの風邪じゃないかもしれない”と思って。
その考えが頭をよぎった瞬間、
胸の奥が冷たくなった。
もしも、紫耀に移してしまったらどうしよう。
忙しいのに、無理をさせてしまったら。
変な病気とかだったらどうする?
昨日まで普通に笑っていたのに、
私のせいで何かを壊してしまう気がして怖くなる。
『……ごめん、紫耀……』
かすれた声が、
暗い部屋の中に溶けていく。
ベッドの隣では、
変わらず紫耀が静かに寝息を立てていて。
その穏やかな呼吸の音が、
罪悪感と安心のどちらにも聞こえて、胸が締めつけられる。
本当は起こして縋りたい。
この痛みを、ただ「大丈夫だよ」と包んでほしい。
けれど…、
手を伸ばしたらきっと、紫耀にこの熱が伝わってしまう。
だからただ、布団の中で小さく丸まった。
寒気がするのに、熱くて苦しい。
喉の奥がうずくたび、涙が滲んで。
どうしてこんなに、
身体が言うことを聞かないんだろう。
どうして、紫耀の優しさを素直に頼れないんだろう。
息を整えようとしても、喉がひりつく。
目の奥が熱くて、頭がぼんやりしていく。
ちゃんと起きたら謝らなきゃ。
『大丈夫』って嘘をついたことも。
心配をかけたことも。
紫耀の優しさに気づいていながら何もできずに強がったことも。
せめて朝日が昇る頃には、
ほんの少しでも痛みが静まっていますように。
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作者名:Pino | 作成日時:2025年10月30日 0時


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