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夜のリビング。
ソファに座るAの背中が、小さく見えた。
テレビをつけているから、
普段ならAのひとりごとが聞こえてくるのに。
えぇ!とか、ふーんとか。
きっと無意識に口に出ている彼女をみられるのが、俺は好きで。
Aがリラックスしているからこそ見せてくれる姿だから。
でも今日は夕方からずっと元気がなくて、
さっきからほとんど口を開かない。
なのに俺が何かを聞いても、
首を横に振って、『大丈夫』って小さく笑う。
でも、その“笑顔”が少し震えていた。
俺もAも、
どうしても大丈夫が口癖で。
大丈夫って言うことで、自分を保っているんだよね。
だから強くは言えなくて。
辛いって自覚したくない気持ち、痛いほど分かるから…。
だから俺にできることを。
キッチンに立って、
温かいお茶を淹れて、そっと差し出す。
受け取った彼女は『ありがとう』と呟いたあと、
コップを手に取ったまましばらく動かない。
喉を通すたびに顔をしかめていた朝の様子を思い出して、
胸の奥がきゅっと締めつけられた。
「……やっぱ、痛い?」
少しだけ覗き込むと、Aはゆっくりと首を振った。
けど、その目は泣き出しそうに揺れていた。
繕うように一口だけ飲んで、
すぐにコップを置いて。
その仕草を見たら、
本当は飲み込むのが痛いんだなって気づいちゃうよ。
「無理しないでね」
それだけ言って、彼女の隣に座ってみる。
ブランケットをそっと肩にかけると、
彼女がわずかに体を寄せてくる。
その小さな動きが、信じられないくらい愛しかった。
しばらくして、Aはそのまま目を閉じた。
眠ってるのか、痛みに耐えてるのか。
その表情が苦しそうで、胸が締めつけられる。
“風邪ならいいけど……”
そう思って、彼女の手に触れる。
少し熱いかも。
体の芯から熱をためてるような感覚が伝わってくる。
夜中に熱があがっちゃうかもしれないな、と今日のこれからを一人で考えた。
「A……」
名前を呼んでも返事はなかった。
その代わりに、小さな息が漏れた。
喉が痛くて眠れないのかもしれない。
本当は今すぐにでも抱きしめてやりたかった。
でも、体に触れることすら痛みになるかもしれないから。
Aが何に苦しんでいるのか、推測だけでは分からないところがある。
だからただ、
そっと背中を撫でた。
“ここにいるよ”って伝わるように。
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作者名:Pino | 作成日時:2025年10月30日 0時


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