Episode115:扁桃炎 You * ページ14
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朝、目を覚ましたとき。
喉の奥が、少しだけ熱を持っている気がした。
乾燥してるのかな、と思って水を一口飲んでみたけど…
水が喉を通る瞬間に、チクリと痛みが走って。
常温の水のはずなのに、喉を通る時に火照るような熱さを感じた。
『あれ……?』
思わず声に出してみると、かすかに掠れた自分の声。
いつもより音が低いような。
ざわつく心をきっと気のせいだと寝起きのせいにして、
とりあえずいつも通り洗面所に向かう。
どうしたんだろう…。
それでも、
リビングから聞こえてくる紫耀の生活音に安心する。
うん。きっと大丈夫。
いつも通りの朝だって信じたくて。
「おはよう、A」
いつも通りの優しい声。
それに笑顔で返したつもりだったのに、
喉が張りついて、言葉がうまく出なかった。
『おはよ』
自分でもわかる掠れた声に、紫耀が少し眉を上げて。
「ん?声、どうしたの?」
『うーん、ちょっと寝不足かな』
自分に言い聞かせるようにして笑ってみせると、
紫耀はそれ以上何も言わなかった。
多分、気になっているけどそっとしておいてくれてるんだよね。
代わりにそっとマグカップを差し出して。
「はい、熱いから気をつけてね」
温かいお茶。
その優しさに、胸の奥がじんわりと温まる。
やっぱり…飲み込む瞬間。
小さく声が漏れてしまうくらい、痛くて。
喉の奥が腫れているような感じ。
けれど、いつも通りを必死に繕った。
紫耀に心配をかけたくない。
私も自分を信じたい。
それでも一日を過ごして、
夕方には少し体が重くなっていた。
もう喉は焼けるように痛くて。
息を吸うたびに、痛みが走るのを堪えて。
ただの疲れ。
きっと寝れば治る。
だから早めに寝てしまえば大丈夫。なんて、言い聞かせていた。
けれど夜になる頃には、
飲み込むことすら躊躇うほど…喉が熱を持っていて。
食べ物どころか、飲み物でさえ喉を通るのが怖くなってしまう。
唾を飲み込むたびに涙が出そうで。
「A、どうした?」
紫耀の声が少し焦っているのが分かる。
でも、心配させたくなくて、
『ううん……大丈夫。ちょっと痛いだけ』
そう言って笑おうとしたけど、
唇が震えて、うまく伝えることができなかった。
どこか、体が重くなっていることを感じながら。
明日には良くなっていて欲しいという望みを持って、
私は夢の中へ落ちていった。
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作者名:Pino | 作成日時:2025年10月30日 0時


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