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『紫耀っ……！』
Aの声に、返事ができなかった。
苦しいのに、
体が重たくて、言葉も届かない。
それでも伝えたかった。
大丈夫。俺はだいじょうぶだから。
怖がらなくていいよ、A。
『紫耀……っ、ちょっと、病院行こう？』
Aに応えたいのに。
口が、動かない。
喉が詰まる。
咳をしたくても、喉が痛くて咳ができない。
声を出そうとしても、空気がすれる音しか聞こえない。
Aの目には、涙がにじんでいた。
怖かったんだと思う。
どこが悪いのかわからないまま、俺がどんどん静かになっていくから。
なんとかしたくて、
俺は必死に手を伸ばしてAの手を握った。
「……いこ」
それだけ、喉の奥からしぼり出した。
声になったのかさえ、自信はなかった。
けれど、
Aが確かに目を見て頷いてくれて。
ちゃんと届いたんだ。
Aには伝わったんだ。
そう思えて嬉しかった。
病院に連れていかれる車の中では、
頭がガンガンして、息をするのも億劫で。
目を開けるのもつらかった。
それでも、
隣にいるAの手が温かくて、たまらなくなった。
ただそれだけが、自分の存在を支えてくれてた。
「……ごめんね」
声に出せない言葉を心の中で何度も繰り返した。
「……ありがとう」
そうして、また眠りのなかに沈んでいった。
病院で診てもらった結果は、咽頭炎。
それも、かなり強く炎症が起きていて、
声帯のあたりまで腫れが広がっていたらしい。
点滴と薬が処方され、
医師から「しばらくは会話も控えてください」と言われた。
「喉を完全に休ませないと、回復が長引きます」
そう言われたとき、胸が苦しくなった。
話せないって…紫耀が？
見ると不安そうな横顔。
何か言いたげで、けれど言葉が出せないもどかしさ。
そんな紫耀を、私は黙って見つめるしかなかった。
帰り道、
マスクをした紫耀はずっと黙ったままだった。
車の窓の外をぼんやり見つめる姿が、遠くにいるようで。
それが医師の指示だとわかっていても、
Aはどこか寂しかった。
だけど、手だけはしっかりと繋がれていた。
何も言わなくても、そのぬくもりが全部語っていた。
「ありがとう」
「ごめんね」
「大丈夫」
言葉にできない代わりに、
手で伝えようとしてくれてる。
その不器用さが、
苦しくて、あたたかくて、愛しかった。
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Pino(プロフ) - momoさん» コメントありがとうございます💕お気に入りと言っていただけて光栄です！！毎日読み返してくださっているんですか😳ありがとうございます😭 #7公開、もう少々お待ちください💦 (8月14日 17時) (
レス) id: 19cca15044 (このIDを非表示/違反報告)
momo(プロフ) - #6おつかれさまでした！どのお話もお気に入りです♡毎日読み返してます☺️#7も楽しみにしてます！ (8月14日 10時) (レス) id: b62c2f6570 (このIDを非表示/違反報告)
Pino(プロフ) - わんこさん» なんて嬉しいことを🥺ありがとうございます！！病気は、なかなか周りから理解が得られなかったり違う受け止められ方をされていたりすると、孤独で苦しいものだと思うので…。できる限りリアルで、正しい描写ができるように心がけています✍️ (8月10日 23時) (レス) id: 19cca15044 (このIDを非表示/違反報告)
わんこ - なんでこんなにリアルに書けるんですか⁉すごすぎます！続き楽しみにしてます(^▽^)/ (8月10日 16時) (レス) id: 7371aa6456 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Pino | 作成日時：2025年8月2日 23時
