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病院で再び診察をしてもらうと、
胃腸炎が重症化しているらしいということがわかった。
早めに病院に来て、正解だったみたい。
紫耀は、脱水と電解質異常により即入院が決まった。
ベッドに横たわる彼の点滴ラインは、どこか痛々しいほど細くて、頼りない。
それでも顔色は少しずつ戻り、痺れも落ち着いてきていた。
紫耀の隣に座る私の手を、彼がふいに握ってくる。
「……ありがと。俺、たぶん……自分じゃ、まだ平気って思ってた」
『紫耀……』
「俺、やっぱり心配かけたくないって思うから…。でも、あのときは……ほんとに、自分がヤバいってわかってた」
「それなのに、Aが言ってくれないとダメなんだよ。……わかってるのに、ちゃんと言ったほうがいいって。俺ならAに言って欲しいのにね…」
『そっか。……その気持ちはわかるかも笑』
『でも、気づかせてくれてありがとう。紫耀の目がね、もう助けを求めてたから。私には分かったよ。ちゃんと伝わってたよ』
私がそう言って微笑むと、
紫耀もゆっくりまぶたを閉じて、小さく息を吐いた。
「……Aが隣にいるだけで、俺って最強になれるよね。だって、こんなに分かってくれるんだもん…」
そう言って、紫耀はそっと手を重ねてくれる。
言葉じゃ足りない気持ちが、ぬくもりに変わって伝わってくる。
『……それは私も一緒。紫耀が気づいてくれるから、気持ちを分かち合ってくれるから』
『でも、私の察知能力にはあんまり期待しないで欲しいかも』
「ふはっ!確かに…それは俺もそうだな笑」
しばらくの静寂。
点滴の機械の規則正しい音と、
紫耀の穏やかな呼吸だけが病室に静かに響く。
そのとき、ふいに紫耀がぽつりと漏らした。
「俺さ、思ってたよりずっとAのこと……頼ってるみたい。なんかもう“好き”とか通り越して……いてくれないと、だめなんだなって思った」
紫耀のまっすぐな言葉に、私はうまく返せなかった。
ただ、言葉で伝えられない分、紫耀の手をぎゅっと握り返して。
それでもちゃんと紫耀には届いたみたいで、
彼は笑って、小さくうなずいた。
こんなにも愛おしくて大切な人。
そんな相手が隣にいてくれる幸せを、
私たちは一緒に噛み締めた。
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リクエストありがとうございました!
続けてAver.でも「胃腸炎 重症化」を描きます☺️
比較して読んでいただけるよう…同じ重症化でも、症状を違うものにしています🙇♀️
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Pino(プロフ) - momoさん» コメントありがとうございます💕お気に入りと言っていただけて光栄です!!毎日読み返してくださっているんですか😳ありがとうございます😭 #7公開、もう少々お待ちください💦 (8月14日 17時) (
レス) id: 19cca15044 (このIDを非表示/違反報告)
momo(プロフ) - #6おつかれさまでした!どのお話もお気に入りです♡毎日読み返してます☺️#7も楽しみにしてます! (8月14日 10時) (
レス) id: b62c2f6570 (このIDを非表示/違反報告)
Pino(プロフ) - わんこさん» なんて嬉しいことを🥺ありがとうございます!!病気は、なかなか周りから理解が得られなかったり違う受け止められ方をされていたりすると、孤独で苦しいものだと思うので…。できる限りリアルで、正しい描写ができるように心がけています✍️ (8月10日 23時) (
レス) id: 19cca15044 (このIDを非表示/違反報告)
わんこ - なんでこんなにリアルに書けるんですか⁉すごすぎます!続き楽しみにしてます(^▽^)/ (8月10日 16時) (
レス) id: 7371aa6456 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Pino | 作成日時:2025年8月2日 23時


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