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Episode90:二日酔い You * ページ36




「……ただいま」


玄関の扉を開けた瞬間、
ふわりと広がったのはいつもの柔らかい香りじゃなく、
ほんの少しだけ…アルコールの匂いだった。


あれ、飲んでる?


Aがお酒を飲むのはほんとに珍しい。

しかも家でひとりで飲むなんて、
もっと珍しい。



「A〜?」


リビングを覗くと、
ソファにちょこんと座ったAが、缶チューハイを手にしていた。
足元には、すでに空いた缶が3本。



『……あ、紫耀くん』


声のトーンも、ちょっといつもより低い。
しかも紫耀くんって笑

目元が赤くて、
少しだけ頬が火照っているようにも見えた。


「珍しいね。飲んでたの?」


『うん、なんか…ちょっとだけ飲みたくなって。ダメだった?』


「いやいや、全然。そういう日もあるよ」


そう言いながら隣に座ると、
Aはふとスマホを伏せて、ぽつりとつぶやいた。


『……今日、たまたまSNSで見かけちゃったの』


「ん?」


『紫耀のこと、書かれてたの。…あんまり良くないこと』


その言葉に、心のどこかがちくりとした。


「まぁ…たまにあるよ、そういうの。俺、そういう仕事してるし」


『……それは、知ってる。分かってるけど』


Aの声が、少しだけ震えてた。


「でも……なんでそんなこと言えるんだろうって。紫耀が、どんなふうに頑張ってるか知りもしないで』

『どれだけ優しい人かも、知らないで」



Aは、ぎゅっと缶を握りしめていた。


『……なんで紫耀が、そんなふうに言われなきゃいけないの?』


涙が滲みそうな瞳で、まっすぐこっちを見てくる。


……え、なにこれ。かわいい……

心のどこかで、驚いた。
でも、すごく嬉しかった。
こんなふうに感情をあらわにしてくれるAって、
ほんとに珍しいから。

お酒のせいかな?
Aは時々…って言っても、一年に一回あるかないかくらい。これまで溜まっていた鬱憤とか気持ちが抑えきれなくなって少しだけ荒々しくなることがある。

初めてそれを見たときには驚いたよ。
でも、Aってそんなになるまで我慢してるんだって知ったから。

いつでも優しくて、誰にでも笑ってる。
でも何にも感じてないわけじゃないから。

他の人の何倍も、耐える力があるだけで。


それを俺に見せてくれたこと、
刺々しいAを出せる相手になれていることが、
すっごく嬉しかったんだよね。











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Pino(プロフ) - momoさん» コメントありがとうございます💕お気に入りと言っていただけて光栄です!!毎日読み返してくださっているんですか😳ありがとうございます😭 #7公開、もう少々お待ちください💦 (8月14日 17時) (レス) id: 19cca15044 (このIDを非表示/違反報告)
momo(プロフ) - #6おつかれさまでした!どのお話もお気に入りです♡毎日読み返してます☺️#7も楽しみにしてます! (8月14日 10時) (レス) id: b62c2f6570 (このIDを非表示/違反報告)
Pino(プロフ) - わんこさん» なんて嬉しいことを🥺ありがとうございます!!病気は、なかなか周りから理解が得られなかったり違う受け止められ方をされていたりすると、孤独で苦しいものだと思うので…。できる限りリアルで、正しい描写ができるように心がけています✍️ (8月10日 23時) (レス) id: 19cca15044 (このIDを非表示/違反報告)
わんこ - なんでこんなにリアルに書けるんですか⁉すごすぎます!続き楽しみにしてます(^▽^)/ (8月10日 16時) (レス) id: 7371aa6456 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Pino | 作成日時:2025年8月2日 23時

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