・ ページ4
⸻
食べて、吐いて、
自分を保ってるようなフリして。
でもその実、ただ壊れていってただけで。
誰にも気づかれたくなかったのに、
心の奥では、誰かに気づいてほしかったのかもしれない。
Aが、何も言わずに背中に手を添えてくれた。
言葉なんかいらないって、
ただ、そのあたたかさで伝えてくれた。
『私はそばにいるよ』
その一言が、
どんな優しさよりも強くて、やわらかくて、
俺はもう、耐えきれなかった。
「……やめなよって言わないの？」
少し拗ねたように聞いた俺に、
Aは静かに微笑んだ。
『ううん。紫耀が自分で「やめよう」って思えるときまで、私は隣にいるだけ』
涙が出るかと思った。
俺がずっと欲しかったのは、
答えでも助言でもなくて。
“否定しない誰か”だったんだ。
“やさしさ”って、
時に重くて、
でも本当に救われるのはこういう言葉だったりする。
「大丈夫」じゃなくて、
「そばにいる」って。
この人がいてくれて、よかった。
隠さずに、向き合ってみようと思えた。
自分の弱さを認めるのはまだ怖いけど。
だけど、一人じゃないって思えるだけで、
少しだけ、
この夜を越えられそうな気がした。
⸻
「……わかんない。なんでこんなことしてんのか、俺にも……もう、わかんないんだ」
紫耀がそう呟いたとき、
私の胸の奥がギュッと痛んだ。
その声が、
本当に、今にも壊れそうで。
強がることも、隠すことも、紫耀はいつも上手だったから…
こんなふうに、
素直な気持ちを私に向けてくれるのが、
どれだけ、勇気のいることだったか。
どれだけ、怖かったか。
想像するだけで、涙が出そうになった。
だから私は、そばにいたいって思うんだよ。
食べすぎてしまうのなら、私もその隣にいさせてよ。
一人で罪悪感とか不安とか、何でもかんでも背負い込まないでほしい。
『紫耀が自分で「やめよう」って思えるときまで、私は隣にいるだけ』
それしかできないことが、
もどかしくなるくらいだった。
でも。
紫耀にとっては、こうしてそばにいる存在が必要で大切なんだってこと、私には分かったから，伝わってきたから。
紫耀はそれから少しずつ、
変わっていった。
急に変わるわけではなかったけれど。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 19人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Pino(プロフ) - momoさん» コメントありがとうございます💕お気に入りと言っていただけて光栄です！！毎日読み返してくださっているんですか😳ありがとうございます😭 #7公開、もう少々お待ちください💦 (8月14日 17時) (
レス) id: 19cca15044 (このIDを非表示/違反報告)
momo(プロフ) - #6おつかれさまでした！どのお話もお気に入りです♡毎日読み返してます☺️#7も楽しみにしてます！ (8月14日 10時) (レス) id: b62c2f6570 (このIDを非表示/違反報告)
Pino(プロフ) - わんこさん» なんて嬉しいことを🥺ありがとうございます！！病気は、なかなか周りから理解が得られなかったり違う受け止められ方をされていたりすると、孤独で苦しいものだと思うので…。できる限りリアルで、正しい描写ができるように心がけています✍️ (8月10日 23時) (レス) id: 19cca15044 (このIDを非表示/違反報告)
わんこ - なんでこんなにリアルに書けるんですか⁉すごすぎます！続き楽しみにしてます(^▽^)/ (8月10日 16時) (レス) id: 7371aa6456 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Pino | 作成日時：2025年8月2日 23時
