第六波 ページ7
浅野は、帝国議会の演壇に立っていた。
首相の地位を得てからしばらく経つが、今でもここに立つ時にはかなり緊張する。なにしろここで失言でもすれば大事になりかねないのだから。
「…以上より、連合国との和平を少しでも早めるため、これらのことを勘考しております」
そう言い終えた途端、野党の議席からは野次が飛ぶ。いつものこと、と流し席に戻ろうとしたところで、彼らの席から手が上がった。議長に指名されると、彼、吉良義央はつかつかと前へやってきて言った。彼は浅野が最も苦手とする男である。野党第一党を率いているだけあり実力もあり人望も厚い。
「首相。質問させていただきます。首相はいつも和平和平と言っておられるが、最早連合国側に和平の意図はないとしか思えません。和平に拘るうちにいつの間にか大日本帝国は滅びます。首相はもし和平に失敗した場合どのような手段をお考えか」
丁寧ながらも棘のある言葉を受け、浅野は顔をしかめたくなる。
しかしそれを抑え、演壇に戻った。
「連合国はまだ和平に応じる気がないわけではありません。和平交渉は無駄ではないと考えております。しかし、和平に失敗した場合を想定しドイツとは一応軍事同盟を結ぶことをただ今検討しております」
「ドイツと結べばなんとかなるという考えが甘いというのです。首相は防共協定を結ぶ方針で検討中のようですが、いっそのこと連合国と対立している国で纏まって同盟を組むべきでは」
「そんなことをすれば、対立姿勢を明確に示すことになります。連合国を煽るようなことはしたくありません」
その後も、吉良と浅野の議論は続いた。なんとか和平を目指し続ける浅野に対し、それでは甘いと主張する吉良。二人の論戦は、国会の風物詩となりかけていた。…尤も浅野にとってそれは不快でしかないのだが。
長い審議を終えた浅野は、部屋に戻り大きく嘆息した。毎日毎日吉良との議論をしてばかりで全く話が進まない。それこそそんなことをしている間に外国に付け込まれ攻められてしまうではないか。
「軍人でもないあいつが知ったかぶって…」
彼は他に誰もいない部屋でそう呟く。
「彼の意見も一理あるかもしれない。しかしあいつは和平の可能性を完全に消して考えている。あいつの言うなりにすれば……総動員戦は、免れない」
浅野を訪れようとしていた片岡は、それをたまたま聞いてしまい胸を痛めた。
「首相。思い詰められませぬよう……」
それだけ扉の外でいうと、彼はそっとそこから離れた。
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嵩画鯉城@トラ!トラ!トラ!(プロフ) - 月読命さん» ありがとうございます(o^^o) そうなんですね〜、死後百年ですか…この小説の舞台は若干微妙な年代なので、その辺り気を付けて書いていこうと思います。 (2017年10月6日 18時) (
レス) id: 3ce9c05f06 (このIDを非表示/違反報告)
月読命 - 更新がんばってください！ちなみに歴史上の人物の場合、死後およそ１００年で名前をかってに使われない権利みたいなのが消えるみたいです。 (2017年10月2日 20時) (レス) id: 3990fcd378 (このIDを非表示/違反報告)
蘭秀@ニイタカヤマノボレ(プロフ) - あんこ(ろ)餅さん» コメントありがとうございます。歴史上の人物を使用する場合はオリフラを外す必要はない、と聞いたのですが…。ちなみにww2の内容については実在する団体は一切使用しておりません。 (2017年6月19日 7時) (レス) id: c435ca72cc (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(ろ)餅 - これはオリジナルですか？実在する団体などを使用してる場合はオリジナルフラグを外してくださいね (2017年6月19日 7時) (レス) id: db0d61df1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蘭秀、鯉城 x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年6月11日 19時
