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第三波 ページ4

大石は深呼吸をした。やはり自分の家というのは落ち着くものだ。
我が家の息を吸うのが何日ぶりだか、彼は最早数えることを諦めていた。ここ最近は国際情勢も緊迫し、ほとんどの時間を首相官邸で過ごすようになっている。
見かねた浅野が、上司としての権限を行使して大石に休むよう指示を出したのだった。
「首相も私のことなどお気になさらずとも良いのに……」
ふと呟いた大石だったが、その瞬間激しいめまいに襲われ、側の布団に座り込む。
首相の判断はいつも適切だ、と頭のどこかで考え、彼はすぐに眠りに落ちた。



ずいぶんと古めかしい街並みの中を、彼は歩いている。歩く道の両側には、大勢の人が野次馬根性を丸出しに駆けつけていた。

――直訴へ行った二人はちゃんと役目を果たせたのか?

ふと浮かんだその問いに彼は首をかしげる。一体ここはどこだ?それさえ理解できていないのに一体どういうことだ。
しかしそんな彼の心中をよそに、彼の足は勝手に進み続ける。彼の前後には、彼と同じような服装――黒の段だらの羽織――を着た男たちが同じように黙々と歩いていた。
いつのまにか、彼らは寺の門をくぐる。
大石は寺の名前を読もうと目を凝らす。
「泉岳寺」
なんとかそれを読み取ったところで、大石も寺門をくぐった。そのまま戸惑いなく進み、いつしか大きな墓の前へと着く。
……ここは、どこだ。こんな寺も墓も私は知らない。戸惑いのまま彼は墓石を見つめた。
「冷光院殿前少府朝散大夫吹毛玄利大居士」
…一体、これは誰の墓だ。
その問いに対し、自然に頭に答えが浮かぶ。――我が殿、浅野内匠頭長矩公。
どういうことだ。彼の混乱は高まった。
「大石様、ご焼香を」
聞き覚えのある声が彼の隣から聞こえた。

大石は、弾かれたように飛び起きた。
「また、夢か」
呆然としたように呟く。
最近よく夢を見る。内容は少しずつ違うが、それを繋げると1つのストーリーが出来上がった。
それにそれは、ただの夢ではないことを彼は勘で気がついていた。
一体、なんだろう。私が記憶を失ってる期間があり、そこの記憶なのか?しかしそれにしては服装や町並みがあまりにも古すぎる…
ふと、彼の頭に「前世」という言葉が浮かんだ。そんな非科学的な、と否定しようとするが、他にどんな可能性があるというのか?この勘自体が外れていれば、と願うが彼の勘の良さには昔から定評があるのだった。

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嵩画鯉城@トラ!トラ!トラ!(プロフ) - 月読命さん» ありがとうございます(o^^o) そうなんですね〜、死後百年ですか…この小説の舞台は若干微妙な年代なので、その辺り気を付けて書いていこうと思います。 (2017年10月6日 18時) (レス) id: 3ce9c05f06 (このIDを非表示/違反報告)
月読命 - 更新がんばってください!ちなみに歴史上の人物の場合、死後およそ100年で名前をかってに使われない権利みたいなのが消えるみたいです。 (2017年10月2日 20時) (レス) id: 3990fcd378 (このIDを非表示/違反報告)
蘭秀@ニイタカヤマノボレ(プロフ) - あんこ(ろ)餅さん» コメントありがとうございます。歴史上の人物を使用する場合はオリフラを外す必要はない、と聞いたのですが…。ちなみにww2の内容については実在する団体は一切使用しておりません。 (2017年6月19日 7時) (レス) id: c435ca72cc (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(ろ)餅 - これはオリジナルですか?実在する団体などを使用してる場合はオリジナルフラグを外してくださいね (2017年6月19日 7時) (レス) id: db0d61df1d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蘭秀、鯉城 x他1人 | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年6月11日 19時

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