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勘違い ページ21

体が強張って動けない。
千冬がどうしてここに…?



今までじゃれ合いで首に腕を回される事はあった。
だけど、こんな抱きしめるみたいなの…、



初めてだ。




「あれ?おーいA?大丈夫か?」




何か言わなきゃ…!




「ぁ…、かずと、」
「チッ、二度とかけてくんなクソッ!」
「は!?千冬!?ちょ、テメ!」




携帯にそう叫ぶと、千冬は電話を切った。
そのまま私の鞄に、ポイッと携帯を投げ捨てて。




「A」
「……なん、で…此処…、でんわ…っ」




言いたい事が纏まらない。


早く泣き止め!
こんな汚い顔も、弱い所も見せたくない…ッ!




「今日捕まえなきゃ、もう会えねぇ気がした」
「…そ、んな…こと、」
「この一ヶ月半会えなかったじゃねぇかッ!」
「……っ」




腕に力が込められて
私をきつくきつく抱きしめる。



逃がさない、そう言われているようで。




「さっきはごめん…」
「……だいじょぶだよ!だから、離し…て…っ」
「離さない」




片手で覆って、どうにか顔を隠す。
お願いだから、早くどこかに行って。


私は大丈夫、本当に。


千冬の優しさが痛いだけ。
この涙も、千冬が好きすぎるだけ。




「ねぇ、何で俺の事避けてんの?」
「……彼女、出来たでしょ…?」
「ん?一虎クンに言われたの?」
「ちがう…」
「どこ情報?彼女なんていねぇけど」
「……えっ?」




沙羅ちゃんと付き合ったんじゃないの…?




「同窓会の日…、沙羅ちゃんにすきって」
「言ってねぇけど」
「まだすき?って聞かれて、」
「あ!!それ!?どっから聞いてた!?」




千冬があわあわしてる。
この人いつまで私の事抱きしめてるんだろ…。




「だから、まだすき?から…」
「ハァ…」
「ごめん、盗み聞き…」
「それで?俺らが付き合ったって勘違いして、俺の事避けてたの?」
「彼女に悪いし…」




なんて嘘。


彼女がいる千冬の傍にいるのが辛かっただけ。
でも…、勘違いなんだ…。




「で?これからどこ行こうとしてたわけ」
「どこって、家に…」
「一虎クンとこなんか行かせねぇぞ」
「何言っ、んっ!」




チューブトップのタイトワンピース。
ストールをずらし、紐一つない肩に千冬がそっと口づけた。


全身の力が抜けそうになる。




「こんなえろい格好で、他の男んとこなんか行くな」




絶えず落とされる唇に
鼻から息が漏れて、恥ずかしさに身体が火照った。

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えりちゃん - はじめまして!千冬の小説の中でいちばん大好きです♡︎ʾʾ (6月5日 9時) (レス) @page50 id: 84c92b84c7 (このIDを非表示/違反報告)
いぬ? - ずっと泣いてました。涙腺しにました。千冬くんのこともっと好きになりました。 (2022年11月5日 12時) (レス) @page50 id: dc4cbab92b (このIDを非表示/違反報告)
華ノ子(プロフ) - 泣きました〜‪( ;ᯅ; )‬matsuriさんの作品本当に好きです… (2022年7月29日 2時) (レス) @page50 id: 71c3cf5627 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃみさん(プロフ) - 本当にいつもどの作品もmatsuriさまのは素晴らしいです。もう素敵すぎて逆にしんどいです笑 三ツ谷読みたいので、次作楽しみにしております!でもたまに灰谷兄弟の更新もお願いします笑 (2022年7月7日 13時) (レス) @page50 id: e87bae8502 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 初コメ失礼します ! matsuriさんの作品、とても大好きで毎日読んでいます。今回の作品も最高で更新されるたびわくわくしながら読んでいました。この度は完結おめでとうございます!次回作もあらすじ読んだだけでもうすっごく楽しみです!暑いので体調にはお気をつけて! (2022年7月6日 1時) (レス) @page50 id: d402d271eb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:matsuri | 作成日時:2022年5月23日 18時

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