ツンデレラ【松野千冬】

ご機嫌ナナメ ページ17

「連絡先教えたんだから、たまには連絡くれよ」
「……久しぶりですね、一虎さん」



電話の向こうで、あははって笑ってる。




「交換した事すら忘れてました」
「マジかよ！ショック！」




家で一人寂しく晩酌をしているところにかかってきた電話。


『何してんの？』
『一人で家で飲んでます』
『うっわ、寂しいな』
『余計なお世話です！』


なんて、やり取りがあって冒頭に戻る。




「で？どうだったの同窓会は」
「楽しかったですよ」
「へぇ、それは良かったね」
「ハイ」




いつの話よ。


一ヶ月以上も経つのに、今更思い出させるな！
沙羅ちゃんと千冬が……だぁぁあ！考えるな！私！




「千冬も楽しかったかな？」
「さあ？でも楽しかったと思いますよ」
「そうなの？」
「彼女出来ましたし…」
「え！？千冬に！？」




クッソ！先越された！
って、悔しそうな一虎さん。


知らんがな…ッ！




「んーじゃあさ？」
「はい？」
「なんでアイツ最近機嫌悪いの？」




もう一度言う。知らんがな…ッ！




「沙羅ちゃ…、彼女と喧嘩したんですかね？」
「えー、そしたらこの一ヶ月半ずっと喧嘩してる事になんじゃん」




一ヶ月半て……、
同窓会の日からずっとってこと？


何があったんだろう。


千冬が苦しんでるなら、助けになりたい。
悩みがあるなら、話を聞いてあげたい。


だけど、その役目は私じゃない。




「そうなんですね…」
「Aの前ではそんな事ない？」
「いや…、私同窓会以来会ってないので…」
「は！？何で？」
「何でって…」




千冬の惚気話を聞く勇気がないからよ！！！




「ねぇ本当に彼女出来たの？アイツ」
「直接聞いたわけでは…」
「Aのせいじゃないの？機嫌ワリィの」
「え！私ですか！？」
「Aさ、一方的に避けてる？」
「いやー…、あ！でも明後日会いますよ！」




未来の結婚式。


会いたくないけど
久々に千冬の姿を見られるのは、胸が弾む。

単純だな、私って。




「そっか…、したら機嫌直るかな〜」
「あのですね？千冬は私如きに左右されませんよ？」
「明後日、どうなったか連絡してね」
「どうって、」
「それじゃ」




ツーツー。


勝手過ぎでしょ！あのイケメン野郎！


通話終了の画面に溜息が出る。




「千冬大丈夫かな…」




電話帳から松野千冬を探す。



だけど、通話ボタンをタップする勇気は出なかった。

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