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「お前はいつまで私にくっ付いてんだ!」と。ミネルヴァの家を去った後、かれこれ30分以上付け回された身としては、流石に耐え難い物だったのだ。
しかし、メルヴィンは何処かケロリとした様子で、「俺、行くとこないんだよね」と呟く。いや、行くとこなんて自分で作るんだよ! と彼女は叫びたかったが、日が沈み、一枚の皿の様にまん丸の月が浮く夜空の下、彼の言いたい事を即座に汲み取ってしまった。つまり、此奴は下宿先を見つけてなかったのだ。
呆れて物も言えなくなったロベルティーネは心に残った、それこそ1ミクロン程度の親切心を使って、下宿先を思案する。
このジャルドーレに伝が無いと思われるメルヴィンなので、比較的安価で下宿可能な宿を脳内検索したが、ヒット件数は0。一瞬だけだが、ダンテが運営するホテルを考えたが、今の時間帯での受付は愚か、そもそも予約制で割高なホテルなので、すぐさま選択肢の中から省いた。それに、彼が吸血鬼もどきだとバレても困る。
(私は困らんがな)
となると、最も金が掛からず、楽な下宿先はロベルティーネの根城である、あの教会しかなかった。
だが、彼女も得体の知れない男を寝泊まりさせるのは気が引けた。単純に性別の事や彼のテンションもあるが、一番の理由は得体が知れないからだ。一時は助けてくれた事もあるが、それとこれとは話が別である。
兎に角、家には上げたくないので別の案を探していると、皮肉にも考えを読まれたのか、「俺に沢山質問しても良いからさ」とさぁ来いと言わんばかりに両腕を広げた。スポ根漫画的なテンションについて行けないロベルティーネは、コメカミを抑えながらも、いつか殺す相手なんだから良いと疲れた頭で考えて、程なくして「じゃあ、お前、仕事してんの?」と問うた。
そこから帰宅後、夕食の準備中、食事中、食後、その後も色々事細かく飽きる程質問し、寝る寸前までロベルティーネは繰り返した。恐らく、今一番メルヴィンの事を知っているのは彼女なのではと思えるぐらいには、メルヴィンの情報を保持していると確信出来る。だが、それでも一貫して口を割らなかった質問が幾つかあった。
「吸血鬼になった理由は?」「魔女ミネルヴァとはかつてどんな会話をしたのか」「吸血鬼になった後は何をした?」「吸血鬼になった後、家族はどうしたんだ?」──答えてくれなかった数多の質問はどれも異質だったが、その中でより異彩を放つ答えの無い問いは「何故、死にたがるのか」である。
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十二月三十一日(プロフ) - づみさん» 有難う御座います。読んで頂き光栄です。更新頑張りますので、今後共宜しくお願いします。 (2018年3月3日 2時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
づみ(プロフ) - お話がとても好きです、更新たのしみにしています。頑張ってください〜 (2018年3月2日 16時) (レス) id: 688586594f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:十二月三十一日 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月18日 21時