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聞こえてくる声は確かに青年の物の筈なのに、微かに女性の声が聞こえる。幼く愛らしい声なのにも関わらず、そこから放たれる言葉は極めて聞くに堪えない暴言の応酬だった。「死にたくない、助けて」と言う青年に対し、その声は攻め立てる様に「使えない、さっさと消えろ」と吐き出す。

「一体どうなって……」
「なんだか、会話してるみたい……」

 当然、青年は誰とも会話をしていない。此処にはロベルティーネとメルヴィン、青年。そして、服を残して全てがドロドロに溶けてしまった二人の遺体だけだ。余りにも唐突に始まった茶番劇に、どう対応すれば良いのか分からない二人は、その様子を見ている事しか出来ない。どう対応すれば……なんて生温いかもしれない。これは完全に手遅れだと二人は悟っていたからこそ、何も出来ないのだ。
 青年は血の涙を流しながら、助けを乞う。だが、それは本当に突然、時間が止まったかの様に終わりを告げた。

「助けてよ、失敗したお前に用は嫌だ、死にたくない、往生際が死に……ジャア、助ケテヤルヨ。死ネ」
「あ」

 青年は口から大量の血を吐くと、前方にうつ伏せに倒れた。そこから再び池の様に血液が流れ広がる。ピクリとも動かなくなった青年に二人は駆け寄るが、既に呼吸は停止しており、まだ暖かい首筋で脈を測るも、脈を打つ独特の音も感触も感じられなかった。
 余りにも突然で悲惨にして凄惨な青年の幕切れに、メルヴィンは血の気が引いていくのを感じた。末端から冷えて行く四肢がガタガタと震え出す。
 ロベルティーネは一旦メルヴィンと遺体の側から離れると、初めに倒したドロドロの遺体に駆け寄る。しかし、ドロドロになった遺体は服と凶器に使われたナイフを残して、跡形も無くなっていた。血の跡はおろか、溶けた跡も見当たらない事を不審に思いながら、ナイフを回収する。

「ねぇ、この子どうするの?」

 震える唇を必死に動かして、メルヴィンは言う。その問い掛けに対し、彼女は「ヤードの連中に渡すか、そのまま処理を行うかだな」と適当に返答しながら、残った服も回収する。

「ヤードに渡すとどうなるの?」
「連続切り裂き事件の犯人が分かって、容疑者死亡で事件が解決」
「じゃあ、処理は?」
「聞きたいか?」

 ロベルティーネは怪しい笑みを浮かべれると、彼は顔を蒼褪めながら首を横に振った。仮に聞きたいと答えても、この次に出てくる表現は自己規制音必須の目に余る羅列が横行する為、聞かなくて正解である。

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十二月三十一日(プロフ) - づみさん» 有難う御座います。読んで頂き光栄です。更新頑張りますので、今後共宜しくお願いします。 (2018年3月3日 2時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
づみ(プロフ) - お話がとても好きです、更新たのしみにしています。頑張ってください〜 (2018年3月2日 16時) (レス) id: 688586594f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:十二月三十一日 | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年1月18日 21時

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