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その声は掠れており、声帯が僅かに音を発した程度で、殆ど聞き取れない。まるでゾンビの様な声だったが、メルヴィンの耳にははっきりとその声は届いていた。
メルヴィンは更に質問をする。
「誰に命令されたの?」
「……たい」
「たい?」
「……」
“たい”とは一体何かを問い質したかったが、男はそれ以降口を閉ざしてしまう。どう聞き出そうかと戸惑っていると、再び男は口元を動かす。しかし、それはとても人の名前らしい言葉では無かった。
「に、にえが……が、ほし」
「……“にえがほしい”?」
「に、に、にえ、にが、かっああぁああぁぁあぁああああ！！」
言葉を復唱した途端、男は手に持っていた包丁を地面に落とした。カラカラと音を立てる包丁を尻目に、苦しそうに頭を抑えながら絶叫する。その様子にメルヴィンは只々困惑する。
しかし、叫び終えた男の様子が突如一変し、フラフラと彼の居る方向へと歩き出す。
「おま……だ……おまえ、の、せ……た」
「言葉を取っちゃったのが気に入らなかったのかな? ごめんよ。只、どう言う意味かなって思って……ガファ！?」
その様子にメルヴィンは身体を後ろに引いた状態で男に言い聞かせるが、男は構わず彼の喉に飛びかかった。そして、馬乗りになり、彼の首を両手で思いっきり締め上げる。強い力で喉が圧迫され、メルヴィンは呼吸が出来ず、足をバタバタさせながら男の腕を掴むもビクともしない。
ちょっとやそっとで死なない彼にとって、この状況は生き地獄その物だった。よっぽどの事が無い限り絶命出来ない上、呼吸出来ない事に悶える。薄れる意識の中、ヒューヒューと笛の様な音を鳴らす喉を震わせて、叫んだ。
「たすけっ……て、ロベル！」
叫びとは到底言い難い微かな声ではあったが、彼女には十分に届く声だった。タッタッタッと規則正しい音が鳴り響き、タッと最後に鳴った音と共に彼女は降りてきた。
「私を無視してんじゃねぇよ！」
ロベルティーネの踵が男のコメカミにめり込み、そのまま壁まで吹き飛ばされる。だが、壁に打つかる寸前で足でブレーキを掛けたらしく、転ぶだけ済む。
解放されたメルヴィンは激しく咳き込みながら、足りなくなっていた酸素を肺一杯に吸い込むその傍で、ロベルティーネは美しく着地し、さも呆れた様に腰に手を当てながら立ち上がる。
「大丈夫か」
「ゲホッ……な、何とか」
「そう」
彼女は表情を変えずに重心を落とすと、再び男目掛けてスタートダッシュを掛けた。
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十二月三十一日(プロフ) - づみさん» 有難う御座います。読んで頂き光栄です。更新頑張りますので、今後共宜しくお願いします。 (2018年3月3日 2時) (
レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
づみ(プロフ) - お話がとても好きです、更新たのしみにしています。頑張ってください〜 (2018年3月2日 16時) (レス) id: 688586594f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：十二月三十一日 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年1月18日 21時
