2話 【ヒーローではなくヤンキーである】 ページ3
「女だしちょっとは手加減してやるよ！さ、どっから殴られてぇんだ？」
「あ、あのっ、う、後ろ……」
私の胸倉を掴んでいる男に後ろを指差す。そこには、殺気立ったオーラを放つ赤髪と黒髪が。片目隠れの子……は分かるけど、赤髪の子は知らない。誰……？
「あっは……僕にやらせてよ、虎。こういう腐った奴らは徹底的に半殺しにしないと分かんないみたいだし……？」
「じゃ、半々にするか。丁度相手も4人だ。2人ずつな」
「……ま、妥協してあげる」
私の胸倉を掴んでいた男やその連れはわなわなと震え、その場を一目散に逃げ出した。えっ。一体どういう事……？だって、私、来たばかりで。それとも良いおもちゃを取られて怒ったとか？あり得る。ありえ過ぎる。やけに2人の身長が高く見えて怖い。
「あー……逃げちゃった。ま、でも後でシメにいこ……。虎も行くよね……？」
「ああ。大丈夫か、A。俺らがついていけば良かったな、すまねえ」
「えっと、あの……私、名前教えてないのにどうして……」
自己紹介もしていない。なのにどうして私の名前を知っているのだろうか。2人はハッとしたような顔をしてから気にしないでと微笑んだ。
「取り敢えずこの学校では安心していいよ。僕が全員シメるから」
「あっ、狡いぞアキヲ！俺も俺も！」
「じゃあ譲るよ……。メンドいし。僕はそれよりAと一緒に居たいし」
そんな感じで2人の会話を眺めていると、横からがばっと抱きつかれる。えっ、だ、誰！？反射的に横を見ると、緑髪の人の姿が。え？本当に誰？抱きつく先を間違えたとか？
「Aっ！ああ、こんなに大きくなって……。でも可愛らしい顔は変わってないね」
「あ？子規君、その手離してよ。Aに軽々しく触れるなって前々から言っておいたじゃん」
「でもさ！本物だよ？髪ツヤツヤで、ほっぺも柔らかくて、手も小さくて＿＿」
「いっ、いたたたたっ！？」
緑髪の人がやっと離れたかと思えば私の手を握る。待って、すごい痛い。折る気？黒髪の『アキヲ』と呼ばれた人が怖いほどの笑みを浮かべている。
「これだから子規君は……。力加減が出来ないうちは本当に触んないで。もしAの腕が折れたりしたら折り返すからね？」
息が詰まって中々に居心地が悪い空間だ。助けてくれたことは素直に感謝したいけど、でも、なんで助けてくれたのかはまだわからないし。……家に帰りたい。
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作者名：病み好きりんごジャム | 作成日時：2021年2月24日 7時
