ハグしてください〈ハイキュー短編集〉

木兎光太郎 ページ10

「ちょっと光太郎！なんでそんなに濡れてるの！？｣


走ってくるなり


俺の頭をわしゃわしゃタオルで拭いてくれる


俺らのマネ兼俺の彼女。


「自転車ぶっ飛ばしてきた！」


「理由になってない」


「雨降るなんて知らねーもん」


「暖かいわけじゃないんだから風邪ひいたらどうするの？」


「大丈夫！」


「大丈夫じゃない。」


バッグ、制服、と手際良く拭いてくれて、


全然乾かない、とかいいながら


頭を拭かれる。


「自転車ぶっ飛ばしてきたってことは朝練間に合いそうになかったとか？」


「お前が起こしてくんねーから。」


「起こしたって起きないでしょ。赤葦も呆れてたよ？｣


「お前が起こしてくれたら起きるのにー」


「光太郎の家遠いからやだ。」


起こそうと思ったら来てくれるんだ。


電話とかじゃなくて。


そう思ってニヤニヤした。


「寒くない？平気？」


「えー寒い」


「どうしよっか」


「さみぃからハグしてあっためて」


「私も濡れるじゃんやだよ。」


ちぇー。Aといちゃつけると思ったのに！


「ごめんって光太郎しょぼくれないで。」


そう言いながらぎゅっと抱きつかれる。


「濡れるの嫌なんじゃないのか？」


「ジャージだし乾くからいいよ。それよりも、今くっついたら離れたくなくなりそうだな…って」


下を見ると、赤くなった耳が見えた。


「Aめちゃめちゃ可愛い」


驚いたように顔を上げたAに


触れるだけのキスをちょっとだけ長めにした。


「続きは帰りな」


「ばっ、光太郎！！」


「朝練行かねーと！」

黒尾鉄朗→←西谷夕

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す