ハグしてください〈ハイキュー短編集〉

及川徹 ページ3

「あの、何も聞かずぎゅってして貰えませんか」


「いいよー」


急に正座して何があったのかと思った。


何があったか知りたいのは山々だけど、


可愛い彼女からのお願いは断れないよね。


腕を広げれば、遠慮がちに入ってきたA。


抱きしめながら頭を撫でると、


微かに聞こえる嗚咽。


あやす様に体を揺らせば、泣き声は大きくなった。


「やっぱり何も聞かないって言うのは無理かな。俺には話せない？」


「…安心したくて。先輩がぎゅってしてくれれば大丈夫って思えるから。」


「なにがあったの？」


「…先輩に私は似合わないって」


「どこの誰がそんなこと言ったの。」


「それは、あんまり言いたくないです…」


「そういうとこまで優しさ出さなくていいのに。」


俺のファンか何かに嫌がらせをされたんだろう。


「似合わないのはほんとのことだから。」


「なんで？」


Aの体を離して、濡れている目を見つめた。


「好きに似合う似合わない必要？」


「先輩の隣を自信もって歩きたいんです。だから今日やっぱり釣り合ってないんだなって思って悲しくて、先輩のハグは安心するから。好きって想われてるような気がするから｣


「そこ気がするいらないからね。好きだよ。」


そこは訂正しておいて、腕の中にAを閉じこめる


似合ってないのは俺の方じゃないかな。


バレーで全然時間取れなくても笑ってくれる


優しくて器の大きい子だし、


何よりめちゃめちゃ可愛いし、


顔で選んだの？って聞かれそうなくらいの可愛さ。


これで性格もいいから。


「むしろ、俺の方が釣り合ってないんじゃない？」


「そんなことないです！先輩かっこいいし、こんな私にも優しくしてくれるし…｣


「思ってることはお互い様じゃん。」


何か悟ったような顔してるけど、


俺と同じ事考えてたら嬉しいよ。


「だからさ、好きって気持ちあれば周りなんかどうでもいいと思うんだけど、どう？」


「徹先輩、大好きです」


「ん、俺も」


「先輩自分のこと好きって言いながら彼女抱きしめるのどうなんですか」


「今Aに好きって言ったつもりだったんだけど！？」

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