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9、オメガの秒針が刻む恋の記憶 ページ9

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 私はお気に入りのエプロンの腰紐をきゅっと結び直しながら、ふわりと立ちのぼる焼きたてのトーストの香りに目を細めた。キッチンの窓から差し込む朝の光はまだ頼りなく、
マグカップから立ちのぼるコーヒーの湯気に揺れている。

「なおちゃん、トースト焼けたよ。ジャムとバターどっちにする?」
「……どっちも」

振り返ると、なおちゃんは片手で頭を押さえながら、
もう片方の手でリモコンをいじっていた。

「どっちもって、なおちゃん毎回バターだけじゃん?」
「ちゃうねん、今日は気分でジャムもいける気ぃするんや」

「じゃあ、二枚焼くね」と答えながらトーストを追加で焼く準備をする。

「朝からよー動くなあ」

なおちゃんが口を開いた。自分は動かないで人が動く様子に感心する、それは貴族の特権なのか、単なる怠惰なのか。
どちらにせよ王子様ならもっと気の利いたことを言うはず。

「なおちゃんが動かないからでしょ?」

くすくす笑いながら、食卓にトーストとコーヒーを並べていると、なおちゃんはようやく重力に抗って身体を起こし、
前髪を掻き分けながら席についた。私は思う。世の中には朝食の時間を「幸せなひととき」と呼ぶ人々もいるらしい。
なるほど、幸福とは幻想である。

「今日はジャムつけてみろや。俺が選んだる」
「えっ、なんでなおちゃんが選ぶの?」
「Aちゃんのセンス信用ならん」

 その一言で終わらせるあたりが、なおちゃんらしい。
彼はことあるごとに私の選択眼に疑問を呈してきた。色の組み合わせ、映画の趣味、果てはマグカップの取っ手の角度にまで。反論する気力はない。

 私はジャムの見た目が好きだ。オレンジ、ブルーベリー、ストロベリー、チョコレート。色とりどりの瓶が棚に並ぶ様は、それだけで一つの宝石箱のようであり、毎朝の私の機嫌は、その日のジャムの色に左右される。なおちゃんは黙ってひとつの瓶を手に取った。赤い赤いストロベリー。それを躊躇いなくトーストに塗り始める。スプーンの背でぐいぐいと押し広げ、端の方まで神経質なまでに均一に。

「ほら、完璧やろ?」
「……え、きれい!なおちゃんジャム塗る職人とかなれるんじゃない?」

端の角までジャムが行き届いていて、波一つない赤い絨毯みたいだった。一口かじる。甘酸っぱい苺の風味が、焼きたてのパンと一緒に口の中でほどけていく。なおちゃんは呆れたように鼻で笑った。


「なんやねんその仕事」


**

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柊あんず(プロフ) - 感想さん» お返事遅くなり大変申し訳ございません。そしてコメントありがとうございます!あの作品も読んでくださっているんですね♡そうなんです、今回は一見同じような系統の、反対の女の子を書きたくて…!!直ぴの良いところは性格の悪さ!間違いないです!! (1月19日 16時) (レス) id: 8cca98d851 (このIDを非表示/違反報告)
感想 - 「五条悟とパパ活したい!」の夢主と反対の考えをしている夢主ちゃんでもサイコーに可愛くて賢くて世渡り上手で好きだしやっぱり直哉の良いところはこの性格の悪さにある!と思いながらニヤニヤして読んでます。 (11月27日 22時) (レス) id: df8f599215 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - おはぎさん» コメントありがとうございます!私の作品を読んで直哉が一番好きに…!?感無量でございます…私も直哉を書くのが楽しくて仕方ないので、こうして一緒に楽しんでいただける読者さまがいてくださることが、何よりの励みです💐今後ともよろしくお願いいたします! (11月12日 0時) (レス) id: 8cca98d851 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - もやしナムルさん» コメントありがとうございます!わー!あの作品、本当に衝動で書いたので一度パス保護かけようか迷ったりもしたのですが、そう仰っていただけると書いた甲斐があったなと嬉しく思えます…!あの作品とはまた違う直哉の関係性にご注目くださいませ🐰💕 (11月12日 0時) (レス) id: 8cca98d851 (このIDを非表示/違反報告)
おはぎ - 「五条悟とパパ活したい!」を読んだ日から直哉が1番好きになりました。 なのでまさかあんずさんが直哉の新作描いてくれるなんて本当に嬉しくて泣きそうです😭 言葉に表せないくらい嬉しいです😭 更新頑張ってください! (11月10日 0時) (レス) id: a0fa270004 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あんず | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/HiiragiAnzu/  
作成日時:2025年11月9日 1時

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